銀行では、融資申請する企業の税務申告書の何をどのように見ているか。
諸留誕著「顧問先の銀行融資支援スキル 実装ハンドブック」(日本法令)を参考にして。
目次
銀行は税務申告書も見ている
銀行は、融資申請する企業から、決算報告書だけでなく税務申告書・勘定科目内訳書・概況書もあわせて預かるようにしています。
銀行が、税務申告書を見てどこまで内容が分かるかどうかについては個人差があるといわれていますが、融資申請資料として渡している以上、分かると考え、対処したり工夫したりしたほうがよいと考えられます。
税務申告書のチェックポイント
別表一
- 青色申告かどうか(白色の場合、取り消されたなど青色にできない理由があるかもしれないと見られる)
- 受信通知・受領印はあるかどうか(提出済みのものかどうか)
- 期限内に申告しているかどうか(期限後になっている場合、信用が下がる)
- 税理士署名欄が埋まっているかどうか(署名がない場合、正確性が疑われたり、税理士に署名できない理由があるのではないかと見られる)
- 税理士が短期間で頻繁に変わっていないか(税理士が粉飾・脱税を強いられて解約しているのではないか)
別表二
- どのような株主がいるか
- 各株主の力関係はどうなっているか(議決権数)
- 中小企業の場合、社長および家族以外の第三者の株主がいるかどうか、その株主との関係性
- 社長が議決権数の2/3以上(特別決議の議決権数)を保有しているか
- 第三者の株主がいる場合、不当に強い黒字圧力がかかっていないか(粉飾に追い込まれていないか)
別表四
- 別表の先頭の利益が、決算書の当期純利益と合っているか(粉飾している場合、合わないことも多い)
別表五(一)
- 差引翌期首現在利益積立金額の列の金額と、貸借対照表(特に繰越利益剰余金)の金額とが合っているか
- 期首現在利益積立金額と前期の差引翌期首現在利益積立金額とが合っているか
(合っていない場合、間に修正申告しているなどの事情があるはず) - 修正申告している場合、何が原因で行ったか(→あらかじめ修正申告書の提出とその経緯を説明しておく)
別表五(二)
- 税金の未納・延滞はないか
- 損金不算入の項目に、延滞税・加算税・過怠税などのペナルティーがあるか
(税金の未納・延滞がある場合、理由・経緯・納付見込みを説明しておく) - 損金不算入の項目に、重加算税(重大・悪質な行為へのペナルティー)があるか
別表七(一)
- 過去の赤字の状況はどうなっているか(赤字かどうかを10年遡って調べることができる)
- 欠損金の期限切れが迫っているとしたら、役員借入金の債務免除・遊休資産の売却などを勧めることができるかどうか
別表十一(一の二)
- 貸倒引当金の引当を行っているか
- 引当を限度額まで行っているか
別表十六(一)、十六(二)
- 減価償却費の未計上・過少計上がないか
(赤字でも法定限度額まで減価償却費を計上すべき)