税務調査や税務行政は、AI活用でどう変わるか

税務調査などの税務行政にもAIが活用されようとしています。どのように変わっていく可能性があるのか。

目次

国税庁資料「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」

国税庁から、2023年6月に、「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」が公表されています。

このなかには、「方向性」「納税者の利便性の向上」「課税徴収事務の効率化高度化等」「事業者のデジタル化推進」という項目でまとめられています。

「税務行政の将来像」基本的な方針

  1. 納税者目線の徹底
    :日常使い慣れたデジタルツールから手続きが行えるような環境構築など
  2. あらゆる納税者を想定した施策の推進
    :デジタルに不慣れな方も含めた納税者に対しても、効率的で使い勝手の良いサービス提供を目指す
  3. データ活用の徹底
  4. 業務改革の徹底
    :業務のあり方や職員の働き方そのものを見直す
  5. 納税者情報の取扱いやセキュリテイの確保

納税者の利便性向上の具体策

  • デジタルツール(スマホ、PC等)の活用
  • e-TaxのUI/UX改善(視認性、操作性、自動入力)
  • キャッシュレス納付の推進
  • 公金受取口座を利用した還付
  • 年末調整手続きの簡素化
  • 納税証明書のオンライン取得
  • チャットボットの充実
  • ホームページの検索性向上
  • LINEによる情報配信

データ活用の具体策

  • AIの活用(申告漏れの可能性の高い納税者等の判定など)
  • オンラインツール等の活用(Web会議システム、オンラインストレージ)
  • 関係機関照会等のデジタル化(国・地方間、金融機関、外国税務当局など)

事業者のデジタル化促進の具体策

  • デジタルインボイス(Peppolなど)
  • e-Tax
  • 法定調書提出におけるクラウドサービス利用
  • キャッシュレス納付
  • 公金受取口座の登録・利用
  • 国・地方のデータ連携

AI等がどのように活用されるのか

上記資料の参考資料やその後の各情報をあわせて考え、税務行政(税務調査など)において、システムやAIがどのように活用される見込みなのか。

国税庁のKSKシステムの刷新(KSK2構築)

現在、国税庁で使われてる「KSK」を刷新し、「KSK2」の構築に取り組んでいるといわれています。

これにより、例えば、税目別など各部門が現状分かれて管理されている情報が、統合的に管理される他のことです。

統合されることにより、分析ツール・プログラミング言語・AIによる分析がより有効に機能し、申告漏れの可能性の高い納税者の判定が容易になると考えられています。

人材育成、研修体系の整備

国税専門官採用試験に「理工・デジタル系」の試験区分が新設されています。

また、税務署の人材育成機関である「税務大学校」においても、AIやデータ分析のスペシャリストが講師に選任され、データ活用研修が実施されるなど、データ活用に必要となる高度知識や技術習得に取り組んでいるとされています。

準備調査体制の整備

法人税調査における準備調査の選定基準として、AI導入前では、以下のようなことを視点に選定されていると考えられています。

  1. 直近5年度分の売上・経費・利益等を並べ、増減の激しい科目・新設科目・支出の多い科目などを中心に、決算書や内訳書にてチェック
  2. 内訳書より、売掛金・未収金・買掛金・未払金において、関係法人や親族がいるかをチェックし、相互との整合性を確認
  3. 関係会社・金融機関・官公庁より資料や情報を収集し、問題点を抽出、検討
  4. 過去の税務調査での指摘内容や指導事項の確認
  5. 代表者や親族の個人の確定申告書のチェック

これらは、AIの学習によって効率化できる部分も多いことから、AI導入後は調査対象に選定される対象者の抽出が容易になり、調査対象者が増加すると考えられています。

調査アプローチの効率化

調査対象に選定される対象者が効率的に抽出されたとしても、実地調査する人材には限りがあることから、調査アプローチを多様化し、効率的な調査が行われると考えられています。

  • 軽微なもの→書面・電話による「行政指導」・「お尋ね」
  • 悪質なもの→人による実地調査(人により数字で読めない部分を炙り出す)

人員配置の見直し

「内部事務」を事務センター化・DX化などによる効率化で人手を捻出し、より調査部門に人員を回すと考えられています。

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