”税金は安い方がいい”は本当?9割の経営者が知らない、会社の成長を加速させるお金の話⑦

目先の法人税を減らす「小さな節税」ではなく、未来の利益を最大化する「大きな節税」こそが、会社を永続させる鍵となります。

目次

「節税の王道」は”投資”にあり!会社を成長させる「大きな節税」とは?

多くの経営者が節税と聞くと、保険の加入や役員報酬の増額といった方法を思い浮かべるかもしれません。

しかし、これらは会社の成長を止めてしまう可能性のある「小さな節税」です。

本当に目指すべきは、会社の成長を加速させる「大きな節税」です。

「小さな節税」と「大きな節税」の違い

  • 小さな節税
    保険や役員報酬の増額など、会社の成長を止めてしまうもの。
    払うべきお金をケチってしまう行為です。
  • 大きな節税
    会社を発展させ、大きくするための節税。
    払う必要のないお金を、もっと有効なもの(投資)に使うことです。

では、「大きな節税」の具体的な中身とは何か。

それは「銀行融資を受けて手元資金を減らさずに行う投資」に他なりません。

なぜ、今「投資」が必要なのか

会社経営において、成長を止めた瞬間から衰退が始まります。

  • 商品・サービス
    何もしなければ陳腐化し、顧客は離れていきます。
    例えば、飲食店ならメニューや内装、製造業なら新技術の導入がなければ、競合に勝つことはできません。
  • 従業員
    昇給がなければ、優秀な人材は他社へ流出してしまいます。

常に成長を目指して初めて現状維持ができる、それが経営の厳しい現実です。

そして、その成長の原動力となるのが、利益を適切に再投資するサイクルです。

未来への投資はどこから?まずは自社の「儲け」を正確に知る方法

「大きな節税」、すなわち未来への投資を行うためには、その原資となる「利益」と、会社の現状を正確に把握することが大前提となります。

利益予測の精度が上がれば、「どのくらい投資して良いか」が明確になり、「思ったより利益が出たから」と慌てて保険に入るような事態を避けられます。

「投資」とは何か?

一般的に「投資」と聞くと、機械や設備といった「ハード」面を想像しがちですが、それだけではありません。

「明日の売上に貢献する」ものであれば、すべてが投資と言えます。

  • 人材採用・育成
  • 新商品開発
  • 広告宣伝、顧客接待
  • 従業員の昇給・賞与
  • 社員旅行などの福利厚生

正確な利益を把握するための3つのポイント

正しい経営判断のためには、漫然と数字が並んだ試算表では不十分です。

特に、経費の70%以上を占めることが多い「売上原価」と「人件費」を正確に把握することが重要です。

  1. 売上と原価を対応させる
    「売上は月末締めなのに、仕入は20日締め」といったズレがあると、正しい損益は把握できません。
    売上とそれに対応する原価(仕入、外注費など)の集計期間を必ず一致させましょう。また、正確な棚卸も不可欠です。
  2. 人件費を月次で正しく把握する
    給与の締日に関わらず、毎月1日から末日までの期間で人件費を把握できる体制を整えましょう。
  3. 減価償却を正しく行う
    減価償却が必要な資産を購入した場合、その資産が稼働を始めた月から償却を開始することが大切です。

いくらまで投資できる?回収見込みで考える「投資限度額」の鉄則

自社の利益を正確に把握できたら、次は「いくらまで投資に回して良いのか」を考えます。

まず、投資を以下の2種類に分けて考えましょう。

  1. 回収見込みが決まっている投資
    (例:リースしていた機械の購入、賃貸オフィスの買い取りなど)
  2. 回収見込みが決まっていない投資
    (例:接待交際費、広告宣伝費、研究開発費など)

「回収見込みが決まっている投資」の限度額

このタイプの投資は、投資によって支払いが不要になるコスト(リース料や家賃など)を返済原資にできるため、リスクが低いのが特徴です。

この投資は、全額を銀行からの借入で行うことが前提です。

限度額は以下の式で簡単に計算できます。

投資限度額(リース資産を買い取るべきかどうか)
= 自己所有する前に払っていた年間賃料 × 投資資産の耐用年数

「回収見込みが決まっていない投資」の限度額

こちらは売上との直接的な因果関係が薄い”冒険”ともいえるため、より慎重な判断が必要です。

ここで指標となるのが「営業キャッシュ・フロー」です。

”冒険”に使える資金 = 営業キャッシュ・フロー − 1年以内の借入返済予定額

この「冒険に使える資金」と、今期の予想利益を比較し、予想利益の範囲内であれば、決算が赤字になることはありません。

これが、回収予定の決まっていない投資の限度額となります。

税制優遇を最大限に活用する

融資を受けて行う設備投資は、「大きな節税」の典型例です。

国も企業の投資を後押ししており、以下のような有利な税制優遇措置があります。

  • 中小企業経営強化税制
    一定額以上の設備投資で、即時償却(全額を経費化)または最大10%の税額控除が受けられます。
  • 中小企業投資促進税制
    上記に当てはまらない場合でも、取得価額の30%の特別償却などが可能です。

これらの制度を使えば、「利益を出しながらも税金は払わない」という理想的な状態を実現することも可能なのです。

経営者の報酬は最後のご褒美。会社を成長させるお金の好循環とは

会社の成長を加速させるためには、お金の流れを好循環させることが不可欠です。

成長企業の「お金の好循環」
  1. 「小さな節税」をやめ、しっかりと利益を出す
  2. 法人税を払い、銀行からの評価を高め、いつでも融資を受けられる状態を作る
  3. 銀行から融資を受け、手元資金を減らさずに、未来へ投資する
  4. 投資によって得られた節税メリットや、最新設備の導入による売上増で次の利益につなげる

このスパイラルを描くことができれば、会社の経営は盤石なものとなるでしょう。

では、経営者の役員報酬の増額はどう考えるか。

それは、「必要な支払いをすべて行ってもなお余っている利益」がある場合に、高すぎる法人税を払うくらいなら、という選択肢として初めて浮上するものです。

手元資金を厚くし、会社に十分なお金を残した経営者が、最後の最後に受け取れるご褒美、それが役員報酬と考えるべきということになります。

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この記事を書いた人

長崎で活動する
税理士、キャッシュフローコーチ

酒井寛志税理士事務所/税理士
㈱アンジェラス通り会計事務所/代表取締役

Gemini・ChatGPT・Claudeなど
×GoogleWorkspace×クラウド会計ソフトfreeeの活用法を研究する一方、
税務・資金繰り・マーケティングから
ガジェット・おすすめイベントまで、
税理士の視点で幅広く情報発信中

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