正確な月次決算で現状を把握し、生み出した利益を確実に「資金」に変え、次の成長へ再投資するための”財務改善の好循環”を作る手順について。甘い試算表によるどんぶり勘定を脱し、永続的に発展する強い財務体質を築くための具体的ノウハウについて。
まずは現状把握!「甘い試算表」が会社を潰す理由
財務改善の第一歩は、自社の本当の姿を正確に知ることです。
しかし、多くの企業が陥りがちなのが「甘い試算表」の罠です。
「甘い試算表」が招く負の連鎖
試算表(月次決算)の精度が低いと、以下のような危険な連鎖が生まれます。
- 甘い試算表:実態とかけ離れた数字が出る。
- 甘い予測:「なんとかなるだろう」という楽観的な見通しを生む。
- 甘い意思決定:根拠のない投資や経費使用を行い、経営が悪化する。
経営者が正確な損益を把握していなければ、適切な手を打つことはできません。
経理担当者任せにせず、経営者自身が数字に関心を持つことが重要です。
正確な損益を把握する3つのポイント
月次レベルで正確な試算表を作成するためには、以下のポイントを徹底しましょう。
- 売上と原価の対応
月をまたぐ売上は進行基準で認識するなど、売上と原価、固定費の時間的対応関係を正確にします。 - 限界利益率のチェック
売上と変動費は取引先別に管理し、限界利益率に大きなブレがないかを確認します。この偏差が試算表の精度のバロメーターになります。 - 在庫管理の徹底
毎月の棚卸は実地よりも帳簿の方が正しい場合が多いです。棚卸の月の増減が経常利益を超えないよう管理しましょう。
キャッシュを最大化する!貸借対照表(B/S)改善の具体策
損益計算書(P/L)の整理ができたら、次は会社のお金(キャッシュ)を増やすために貸借対照表(B/S)の改善に着手します。
「この順番で手を打てば必ず良くなる」ステップをご紹介します。
財務体質改善の6ステップ
きれいな財務諸表を作ることだけが目的ではありません。実質的に資金繰りを楽にするために、以下の順序でアクションを起こします。
| 手順 | アクション | 目的 |
|---|---|---|
| ① | 換金できる資産を換金 | なりふり構わず、金目の資産を換金して手元資金を作ります。 |
| ② | 長期借入で手元資金を補充 | 短期的な資金繰りの懸念を払拭します。 |
| ③ | 短期借入金を長期借入金にシフト | 毎月の返済負担を平準化し、資金繰りを安定させます。 |
| ④ | 支払手形を長期借入金に転換 | 将来の支払義務を長期の借入に置き換えます。 |
| ⑤ | 手形割引を長期借入金に一本化 | 割引手形をやめ、資金調達を一本化します。 |
| ⑥ | 資金を元手に自己資本増強 | 安定した資金を元に、財務基盤を強化します。 |
すぐにできる社内・対銀行アクション
これらを実行するために、社内や銀行に対して具体的に動けることも多数あります。
- 経費カット:役員報酬や不必要な経費の削減、保険の解約など。
- 資産の活用:役員所有不動産の会社への売却や、不動産担保の提供。
- 銀行交渉:試算表を持って今後の方針を説明し、プロパー融資への切り替えやリスケジュール(条件変更)を交渉する。
生き残る企業へ!利益を「投資」へ回す成長サイクルの確立
財務改善によって資金的な余裕ができたら、そこで終わりではありません。
最も重要なことは、「生まれた利益を適切に再投資に回す」ことです。
理想的な「成長の好循環」
目指すべきは、以下のようなサイクルを回し続けることです。
- 利益(Profit):まずは本業でしっかりと利益を出す。
- 資金(Funds):利益を元に、銀行融資なども活用して資金的な裏付け(十分な手元資金)を確保する。
- 投資(Investment):確保した資金を、設備投資や人材、研究開発などに再投資する。
- 効果検証:投資によって赤字になっていないか、ライバルとの差別化ができているかなどを検証し、さらなる利益につなげる。
攻めの財務戦略へ
単に節税対策で利益を減らすのではなく、しっかりと利益を出して納税し、その実績を元に資金を借り入れ、投資に回す。
このループに入ることができれば、企業はより強くなります。
設備投資減税など税制などの制度も活用しながら、キャッシュアウトを抑えつつ投資を行いましょう。
正確な「試算表」で足元を固め、「貸借対照表」を磨いて資金を作り、未来への「投資」を行う。
この一連の流れこそが、企業の存続と発展を約束する唯一の道といえます。
