「孫氏の兵法」から学べること。
53)軍争編/兵士の心・力・変化をうまくコントロールする
以治待亂、以靜待譁。此治心者也、以近待遠、以佚待勞、以飽待饑、此治力者也、無邀正正之旗、勿擊堂堂之陳、此治變者也
治を以て乱を待ち、静を以て譁(か)を待つ。
此れ心を治むる者なり。
近きを以て遠きを待ち、佚(いつ)を以て労を待ち、飽を以て飢(き)を待つ。
此れ力を治むる者なり。
正々の旗を邀(むか)うること無く、堂々の陣を撃つこと勿し。
これ変を治むる者なり。
味方が落ち着き整った状態で乱れた状態の敵を待ち、味方が静かな状態でざわついた敵を待つ。
これが戦で兵の心をコントロールするということである。
戦場の近くにいて遠くからやってくる敵を待ち、味方は十分休養を取った状態で疲れた敵を待ち、味方は十分満たされた状態で飢えている敵を待つ。
これが戦で兵の力をコントロールするということである。
整然と旗を立ててやってくる敵を迎え撃ってはならない。また、堂々とした陣構えの敵を攻撃してはならない。
これが戦での変化をコントロールするということである。
54)軍争編/敵を攻めてはいけないときがある
故用兵之法、高陵勿向、背丘勿逆、佯北勿從、鋭卒勿攻、餌兵勿食、歸師勿遏、圍師必闕、窮寇勿迫、此用兵之法也
故に用兵の法は、高陵には向かう勿かれ、背丘には逆(むか)う勿かれ、佯北(しょうほく)には従う勿かれ、鋭卒には攻むる勿かれ、餌兵(じへい)には食らう勿かれ、帰師には遏(とど)むる勿かれ、囲師(いし)には必ず闕(か)き、窮寇には迫る勿かれ。此れ用兵の法なり。
高地にいる敵を攻めてはいけない。
高地からこちらに向かってくる敵を迎え撃ってはいけない。
偽って敗走する敵を追撃してはならない。
気力が充実している敵を攻めてはいけない。
囮の敵にくらいついてはならない。
撤退して帰国しようとする敵を防ぎ止めてはいけない。
敵を包囲したときは必ず逃げ道を開けておくべきである。
窮地に陥った敵を追い詰めすぎてはならない。
以上が、戦において兵を動かすときの原則である。