「孫氏の兵法」から学べること。
58)九変編/敵を動かす
是故屈諸侯者以害、役諸侯者以業、趨諸侯者以利。故用兵之法、無恃其不來、恃吾有以待也。無恃其不攻、恃吾有所不可攻也。
是の故に諸侯を屈する者は害を以てし、諸侯を役する者は業を以てし、諸侯を趨(はし)らす者は利を以てす。
故に用兵の法は、其の来たらざるを恃(たの)むこと無く、吾れの以て待つ有るを恃むなり。其の攻めざるを恃む無く、吾れの攻むべからざる所有るを恃むなり。
敵をこちらの考えているように屈服させるには、あちらの損失となるよう仕向ければよい。
敵をこちらの考えているように使うには、こちらに手を出さざるを得ない魅力があることを示せばよい。
敵をこちらの考えているように奔走させるには、あちらの利益となるよう仕向ければよい。
戦で兵を動かす原則としては、敵が来ないであろうことをあてにするのではなく、いつ敵が来てもよいよう備えておくことを頼みとすべきである。
また、敵が攻めてこないであろうことをあてにするのではなく、敵が攻撃できないような態勢をとっているということを頼みとすべきである。
59)九変編/将が注意しておくべき5つのリスク
故將有五危。必死可殺也、必生可虜也、忿速可侮也、廉潔可辱也、愛民可煩也。凡此五者、將之過也、用兵之災也。覆軍殺將、必以五危、不可不察也。
故に将に五危有あり。
必死は殺され、必生は虜にされ、忿速(ふんそく)は侮られ、廉潔は辱められ、愛民は煩らわさる。
凡(およ)そ此の五者は、将の過ちなり、用兵の災いなり。
軍を覆し将を殺すは、必ず五危を以てす。察せざるべからざるなり。
将には5つのリスクがある。
駆け引きもなくただ必死に戦うような者は、殺されることになる。
生き延びることしか考えずに命がけで戦わない者は、捕虜となる。
短気な者は、挑発されることで、計略に引っ掛けられてしまう。
廉潔すぎる者は、侮辱されることで、計略に引っ掛けられてしまう。
兵や民を愛しすぎる者は、面倒を見すぎることで、苦労が絶えない。
この5つのことは将の陥りがちな過ちであり、戦をするうえでの災いとなる。
軍を滅ぼし、将を死に至らしめるのは、必ず上記5つのリスクのうちどれかによるのであり、十分に注意が必要である。