「孫氏の兵法」から学べること。
79)地形編/地形を考えて作戦を立てる
夫地形者、兵之助也、料敵制勝、計險阨遠近、上將之道也、知此而用戰者必勝、不知此而用戰者必敗
夫れ地形は、兵の助けなり。
敵を料(はか)りて勝を制し、険阨(けんやく)・遠近を計るは、上将の道なり。
此れを知りて戦いを用うる者は必ず勝ち、此れを知らずして戦いを用うる者は必ず敗る。
地形は、戦における重要な要因ではある。
敵の情勢を調べ、勝てる作戦を立て、地形の険しさや距離の遠近などをよく検討するというのは、将の重要な仕事である。
これを分かって戦う者は必ず勝つが、これを分からずに戦いをする者は必ず負ける。
80)地形編/兵・民を守る将は国の宝である
故戰道必勝、主曰無戰、必戰可也、戰道不勝、主曰必戰、無戰可也、故進不求名、退不避罪、唯人是保、而利合於主、國之寳也
故に戦道(せんどう)必ず勝たば、主は戦う無かれと曰うとも、必ず戦いて可なり。
戦道勝たずんば、主必ず戦えと曰うとも、戦う無くして可なり。
故に進んで名を求めず、退いて罪を避けず、唯だ人を是れ保ちて、利の主に合うは、国の宝なり。
戦の法則から必ず勝てるのであれば、君主が戦うなと言ったとしても、戦ってよい。
戦の法則から必ず負けるのであれば、君主が戦えと言ったとしても、戦わなくてもよい。
将は、自分の判断で軍を進めたとしても、撤退したとしても、それは自分の名誉のためではなく、責任からも逃れてはならない。ひたすら兵と民の生命・生活を守り、君主の利益とも合致させるようにする。
このようなことができる将は国の宝である。
81)地形編/将と兵との関係性
視卒如嬰兒、故可與之赴深谿。視卒如愛子、故可與之倶死。厚而不能使、愛而不能令、亂而不能治、譬若驕子、不可用也。
卒を視ること嬰児の如し、故にこれと深谿(しんけい)に赴くべし。
卒を視ること愛子の如し、故にこれと倶に死すべし。
厚くして使うこと能わず、愛して令すること能わず、乱れて治むること能わざれば、譬えば驕子(きょうし)の若く、用うべからざるなり。
将が普段から兵を幼い子のように可愛がって接していれば、兵は将を慕い、危険を冒してでも進んでくれるようになる。
将が普段から兵を我が子のように可愛がって接していれば、兵は将軍と生死をともにし、戦うようになる。
しかし、兵を可愛がり手厚く接していても指示を出して使うことができず、可愛がるだけで命令をすることもできず、軍紀を見出してもこれを罰することができないようであれば、それはわがままな子のようなものなので、決して用いることはできないのである。