孫子の兵法(90~92/九地編)

「孫氏の兵法」から学べること。

目次

90)九地編/決死の覚悟で戦わせるには

原文

凡爲客之道、深入則專、主人不克、掠於饒野、三軍足食、謹養而勿勞、併氣積力、運兵計謀、爲不可測、投之無所往、死且不北、死焉不得、士人盡力

書き下し分

凡そ客為るの道、深く入れば則ち専らにして、主人克たず。饒野に掠むれば、三軍食足る。
謹み養いて労すること勿く、気を併せ力を積み、兵を運(めぐ)らして計謀し、測るべからざるを為し、これを往く所無きに投ずれば、死すとも且つ北(に)げず、死焉(いずく)んぞ得ざらん、士人力を尽くす。

敵国に侵入して攻撃する場合、敵地深く侵入すればするほど、自軍は戦いに専念し結束し、敵に負けないものである。

敵国の土地から兵糧を奪えば自軍の兵糧も足りる。

兵をよく休養させて疲弊させず、士気を高め、戦力を充実させて進軍するようにし、策謀を巡らせながらここぞという箇所に兵を投入するようにすることで、兵たちも決死の覚悟で全力を尽くすようになる。

91)九地編/断固たる覚悟で戦わせるには

原文

兵士甚陷則不懼、無所往則固、深入則拘、不得已則鬪、是故其兵不修而戒、不求而得、不約而親、不令而信

書き下し分

兵士甚だ陥れば則ち懼(おそ)れず、往く所無ければ則ち固く、深く入れば則ち拘(こう)し、已むを得ざれば則ち闘う。
是の故に其の兵修めずして戒め、求めずして得、約せずして親しみ、令せずして信なり。

兵たちは、危険な状況に置かれるほど、恐れることもなくなるものである。

逃げ場がなくなることで断固たる覚悟ができ、敵国深く侵入することで味方は一丸となり、戦うしかない状況のなかで必死に戦う。

このようにして、兵たちは、教えなくとも規律を守り、求めなくとも力戦し、ルールを作らなくとも互いに助け合い、命令しなくとも任務に忠実にふるまうのである。

92)九地編/迷いを断つ

原文

禁祥去疑、至死無所之、吾士無餘財、非惡貨也、無餘命、非惡壽也。令發之日、士卒坐者涕霑襟、偃臥者涕交頤、投之無所往者、諸劌之勇也

書き下し分

祥(しょう)を禁じ疑いを去れば、死に至るまで之(ゆ)く所無し。
吾が士に余財無きも、貨を悪(にく)むに非ざるなり。
余命無きも、寿(いのちなが)しを悪(にく)むに非ざるなり。
令発するの日、士卒の坐する者は涕(なみだ)襟を霑(うるお)し、堰臥(えんが)する者は涕(なみだ)頤(あご)に交わる。
これを往く所無きに投ずれば、諸・劌(けい)の勇なり。

占いや迷信などは禁じ、余計な迷いを持たないようにさせれば、兵は死ぬまで心乱さずに戦うのである。

兵に余計な財貨を持たせないのは財貨を嫌っているのではない。
ここで死ぬことを覚悟して戦わせるのは長生きすることを嫌っているのではない。

決戦の命令が下される日、座っている者は涙で襟を濡らし、横たわっている者は涙が頬をつたうのである。

このような兵たちを、戦うしかない環境に投入することで、古の有名な専諸・曹劌のような勇士となる。

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