「孫氏の兵法」から学べること。
102)九地編/兵を奮戦させる
施無法之賞、懸無政之令、犯三軍之衆、若使一人、犯之以事、勿告以言、犯之以利、勿告以害、投之亡地、然後存、陷之死地、然後生、夫衆陷於害、然後能爲勝敗
無法の賞を施し、無政の令を懸くれば、三軍の衆を犯(もち)うること、一人を使うが若し。
これを犯(もち)うるに事を以てし、告ぐるに言を以てすること勿かれ。
これを犯(もち)うるに利を以てし、告ぐるに害を以てすること勿かれ。
これを亡地(ぼうち)に投じて然る後に存し、これを死地に陥(おとしい)れて然る後に生く。
夫れ衆は害に陥りて、然る後に能く勝敗を為す。
サプライズで手厚い褒賞を行ったり、また、急な非常措置命令を掲げたりすることにより、大軍であっても自在に動かすことが可能になる。
軍を動かすにあたっては、端的に任務のみを命じるようにし詳しい理由は伝えないほうがよい。
また、メリットを強調し、不安がらせるようなことまでは伝える必要はない。
軍は苦しい状況に追い込まれてこそ、生き延びる力が湧き、勝ち抜けることができる。
兵たちは、危機を感じたときにこそ一致団結して奮戦し、敵との勝敗の主導権を握ることができるようになるのである。
103)九地編/戦の目的を完遂する
故爲兵之事、在於順詳敵之意、并敵一向、千里殺將、此謂巧能成事者也、是故政舉之日、夷關折符、無通其使、厲於廊廟之上、以誅其事、敵人開闔、必亟入之、先其所愛、微與之期、踐墨隨敵、以決戰事
故に兵を為すの事は、敵の意に順詳するに在り。
敵に并せて向を一にし、千里にして将を殺す。
此れを巧みに能く事を成す者と謂うなり。
是の故に政挙がるの日、関を夷(とど)め符を折りて、其の使を通ずること無なく、廊廟の上に厲(きび)しくして、以て其の事を誅(せ)む。
敵人開闔(かいこう)すれば、必ず亟(すみ)やかにこれに入る。
其の愛する所を先にして、微かにこれと期し、践墨(せんぼく)して敵に随(したが)いて、以て戦事を決す。
戦を行ううえで重要なことは、敵の意図・狙いを詳しく知ることである。
敵の意図・狙いを知り、その進路を先回りして決戦する場所を決め、有利な状態で戦って敵の将を討ち取るのである。
これこそ巧みに戦の目的を完遂する者であるといえるのである。
開戦が決まったら、関所を封鎖し、敵国の外交官の往来をストップし、帝の前で厳粛に審議したうえで軍事に関する決定事項を話し合う。
敵に隙があれば、必ず速やかにそこを突く。
敵の重要拠点を叩くことを優先的な目標とするが、これはあくまで将の胸のうちにとどめておき、あくまで敵の状況に応じて動きつつ、ここぞというときに一気呵成に勝ちを決めるのである。
104)九地編/始めはおとなしく見せ、ここぞというときに機敏に動く
是故始如處女、敵人開戸、後如脱兎、敵不及拒
是の故に始めは処女の如く、敵人戸を開き、後に脱兎の如くにして、敵拒(ふせ)ぐに及ばず。
始めはおとなしく見せて敵を油断させ、ここぞというときに素早く攻撃すると、敵は防ぐことができないのである。