「孫氏の兵法」から学べること。
108)火攻編/全体の戦いの目的を理解しておく
夫戰勝攻取、而不修其功者凶、命曰費留、故曰、明主慮之、良將修之、非利不動、非得不用、非危不戰
夫れ戦勝攻取して、其の功を修めざる者は凶なり。
命(なづ)けて費留と曰う。
故に曰く、明主はこれを慮り、良将は之これを修む。
利に非ざれば動かず、得るに非ざれば用いず、危うきに非ざれば戦わず。
目の前の戦いに勝っても全体の戦いの目的を達成できないのであれば、その目の前の戦いは無駄であり、続けることはよくないことである(費留)。
賢明な君主はこのことをよく考えており、優れた将軍はこのことをよくわきまえているものである。
なので、国益にならないのであれば軍を動かさず、全体の目的がないのであれば軍を動かさず、危機が迫っているのでなければ軍を動かさない。
109)火攻編/一時的な感情で戦わない
主不可以怒而興師、將不可以慍而致戰、合於利而動、不合於利而止、怒可以復喜、慍可以復悦、亡國不可以復存、死者不可以復生。故明君愼之、良將警之、此安國全軍之道也
主は怒りを以て師を興すべからず。
将は慍(いきどお)りを以て戦いを致すべからず。
利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止む。
怒りは復(ま)た喜ぶべく、慍(いきどお)りは以て復(ま)た悦ぶべし。
亡国は復(ま)た存すべからず、死者は復(ま)た生くべからず。
故に明君はこれを慎み、良将はこれを警(いまし)む。
此れ国を安んじ軍を全とうするの道なり。
君主はいっときの怒りのために戦を起こしてはならず、将軍はいっときの怒りのために戦ってはならない。
あくまで国益に合うのであれば軍を動かし、国益に合わないのであれば軍を動かさないようにする。
怒りはいずれおさまるものである。しかしながら、滅んだ国は元に戻らず、死んだ兵も生き返ることはできないのである。
なので、賢明な君主は戦について慎重になり、優れた将軍は戦において軽率な動きをしないよう戒めるのである。
こうした姿勢が国を安泰とし、軍事力を温存する方法なのである。