孫子の兵法(110~111/用間編)

「孫氏の兵法」から学べること。

目次

110)用間編/スパイの重要性

原文

孫子曰、凡興師十萬、出征千里、百姓之費、公家之奉、日費千金、内外騷動、怠於道路、不得操事者七十萬家、相守數年、以爭一日之勝、而愛爵祿百金、不知敵之情者、不仁之至也、非人之將也、非主之佐也、非勝之主也

書き下し分

孫子曰く、凡そ師を興すこと十万、出征すること千里なれば、百姓の費、公家の奉、日に千金を費やす。
内外騒動し、道路に怠り、事を操(と)るを得ざる者、七十万家。
相守ること数年にして、以て一日の勝を争う。
而るに爵禄百金を愛(お)しみて、敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり。
人の将に非ざるなり。
主の佐に非ざるなり。
勝の主に非ざるなり。

およそ十万の軍を動員し、千里先まで攻め入ったとした場合、その支出は1日千金もの大金となるのである。

国内外とも騒然となり、物資輸送などで疲弊し、道にへたばり、自分の家すら維持できない者が70万人もの数発生する。

こうして数年も対峙し合うものの、最後の勝負などは一瞬で終わるものなのである。

それであるのに、スパイを登用して地位や給与を与えるのを惜しんで敵の内情を知ろうとしないのは、人民への思いやりの薄い愚か者である。

そのような者は軍を率いる将軍などとはいえず、君主を正しく補佐する者ともいえず、勝負を自ら引き寄せる者であるともいえない。

111)用間編/敵に知られることなく情報収集する仕組みは宝である

原文

故明君賢將所以動而勝人、成功出於衆者、先知也、先知者、不可取於鬼神、不可象於事、不可驗於度、必取於人、知敵之情者也、故用間有五、有因間、有内間、有反間、有死間、有生間、五間倶起、莫知其道、是謂神紀。人君之寳也

書き下し分

故に明君賢将の動きて人に勝ち、成功、衆に出ずる所以の者は、先知なり。
先知なる者は、鬼神に取るべからず、事に象(かたど)るべからず。
度に験(けん)すべからず、必ず人に取りて、敵の情を知る者なり。
故に間を用うるに五有り。
因間有り。
内間有り。
反間有り。
死間有り。
生間有り。
五間倶に起こりて、其の道を知ること莫し、是を神紀と謂う。
人君の宝なり。

賢明な君主や優れた将軍が、軍を動かして敵に勝つことで抜群の成功を収めることができるのは、あらかじめ敵の内情をよく知っているからなのである。

あらかじめ敵の情報を知るというのは、神に祈ったり占ったりするようなものではなく、また過去の経験だけで分かるものではなく、自然の法則から分かるものでもない。

必ず人を使い、それによって知ることができるものである。

スパイには、5つのタイプがある。

  • 因間
  • 内間
  • 反間
  • 死間
  • 生間

この5種類のスパイは同時に動くものの、敵に知られることはない。
これは神妙な統轄法であるといえ、これこそ君主の宝とすべきものである。

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