「孫氏の兵法」から学べること。
15)謀攻編/相手をできるだけ傷つけずに勝利することが上策
孫子曰、凡用兵之法、全國爲上、破國次之、全軍爲上、破軍次之、全旅爲上、破旅次之、全卒爲上、破卒次之、全伍爲上、破伍次之
孫子曰く、凡(およ)そ用兵の法は、国を全うするを上と為し、国を破るは之に次ぐ。軍を全うするを上と為し、軍を破るは之に次ぐ。旅を全うするを上と為し、旅を破るは之に次つぐ。卒を全うするを上と為し、卒を破るは之に次ぐ。伍を全うするを上と為し、伍を破るは之に次つぐ。
戦いのあるべき姿は、敵国を傷つけることなくその国力を保全したまま勝つことが上策なのであって、破って勝つのはあくまでこれに次ぐものなのである。
相手の軍団を損なうことなく保全したまま勝つことが上策で、軍団を削いで勝つのはこれに次ぐもの。
相手の旅団を損なうことなく保全したまま勝つことが上策で、旅団を削いで勝つのはこれに次ぐもの。
相手の大隊を損なうことなく保全したまま勝つことが上策で、大隊を削いで勝つのはこれに次ぐもの。
相手の小隊を損なうことなく保全したまま勝つことが上策で、小隊を削いで勝つのはこれに次ぐもの。
16)謀攻編/戦わずして勝つことが理想
是故百戰百勝、非善之善者也、不戰而屈人之兵、善之善者也
是の故に百戦百勝は、善の善なる者に非(あら)ざるなり。戦かわずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。
ゆえに、百戦百勝というのは最高の勝ち方なのではない。戦わずして勝つというのが最高の勝ち方なのである。
17)謀攻編/謀を謀のうちに破る
故上兵伐謀、其次伐交、其次伐兵、其下攻城、攻城之法、爲不得已、修櫓轒轀、具器械、三月而後成、距闉又三月而後已、將不勝其忿、而蟻附之、殺士三分之一、而城不拔者、此攻之災也
故に上兵は謀を伐つ。其の次は交を伐つ。其の次は兵を伐つ。
其の下は城を攻む。城を攻むるの法は、已むを得ざるが為なり。
櫓・轒轀(ふんうん)を修め、器械を具(そな)うること、三月して後に成る。闉(いん)を距くことまた三月にして後に已む。
将、其の忿(いきどお)りに勝えずして、之に蟻附すれば、士を殺すこと三分の一にして、而(しか)も城の抜けざるは、此れ攻の災いなり。
最上の勝ち方は、相手の謀を謀のうちに破ることなのである。
その次によい勝ち方は、外交によって相手を破ることである。
そしてその次によい勝ち方は、野戦によって相手を破ることである。
最もまずいのは、城攻めである。城攻めは、他にどうしてもやりようがない場合に限るべきである。
城攻めとなると、様々な兵器の準備や陣地の構築に時間がかかってしまう。また、将が攻めあぐねて焦り、一気に攻撃しようとすると多くの兵が死亡し、それでも城が落ちないということもありうる。多くのヒト・モノ・カネを損耗することもあり、これが城攻めの危険な点である。