「孫氏の兵法」から学べること。
21)謀攻編/君主はみだりに軍事に介入してはいけない
故君之所以患於軍者三、不知軍之不可以進、而謂之進、不知軍之不可以退、而謂之退。是謂縻軍、不知三軍之事、而同三軍之政者、則軍士惑矣、不知三軍之權、而同三軍之任、則軍士疑矣、三軍既惑且疑、則諸侯之難至矣、是謂亂軍引勝
故に君の軍に患うる所以の者には三あり。
軍の以て進む可(べ)からざるを知らずして、之に進めと謂い、軍の以て退く可からざるを知らずして、之に退けと謂う。是を縻軍(びぐん)をと謂う。
三軍の事を知らずして、三軍の政を同じうすれば、則ち軍士惑う。三軍の権を知らずして三軍の任を同じくすれば、則ち軍士疑う。
三軍既に惑い且つ疑うときは、則ち諸侯の難至る。是を軍を乱して勝を引くと謂う。
君主によって軍事に憂いの生じるものには3つのことがある。
第1は、作戦へ介入することで、軍隊が進むべきでないと感じているときに進めと命令し、軍隊が退くべきではないと感じているときに退けと命令してしまうことである。
第2は、軍政へ介入することで、軍隊の事情を知らないのにもかかわらず、将軍と同じレベルで軍政に介入してしまうと、兵士はどちらの命令に従えばよいか迷ってしまうこととなり、軍隊がまとまりをなくしてしまうことである。
第3は、指揮権へ介入することで、軍隊の臨機応変の処置が分からないのに、将軍と一緒になって軍隊の具体的な指揮までしてしまうと、兵士はどうしてよいか分からず疑問を生じてしまうことである。
軍隊が迷ったり疑ったりすることになれば、諸外国が兵を挙げて攻めてくるといったことにもつながる。
これは、軍を混乱させて自ら勝ちを失ってしまうことになる。
22)謀攻編/勝つための5つの原則
故知勝有五、知可以戰、與不可以戰者勝、識衆寡之用者勝、上下同欲者勝、以虞待不虞者勝、將能而君不御者勝、此五者知勝之道也
故に勝を知るに五あり。
戦うべきと、戦うべからざるとを知る者は勝つ。
衆寡の用を識る者は勝つ。
上下欲を同じくする者は勝つ。
虞を以て不虞を待つ者は勝つ。将の能にして君の御せざる者は勝つ。
此の五者は勝を知るの道なり。
勝つためには、5つの原則がある。
第1に、戦うべきか戦わざるべきでないかを判断できること。
第2に、兵力が大きい場合と小さい場合の戦い方の違いを知ること。
第3に、上下の者が心を同じくすること。
第4に、こちらがよく先のことを考えてしっかりと戦いに備えておき、よく考えもせずに隙を見せて油断している敵と相対すること。
第5に、将軍が有能で、君主が軍事にみだりに干渉しないこと。
23)謀攻編/敵を知り己を知れば百戦危うからず。
故曰、知彼知己者、百戰不殆、不知彼而知己、一勝一負、不知彼不知己、毎戰必殆
故に曰く、彼を知り己を知れば、百戦殆(あやう)からず。
彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。
彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し。
敵のことを知り、自分のことを知っているならば、百戦戦ったとしても危ういことはない。
敵を知らないが、自分のことは知っているならば、勝ったり負けたりするだろう。
敵を知らず、自分のことも知らないならば、戦うごとに必ず危険に陥るであろう。