【メタスキルについて考える】経営の不安は”性格”ではなく”構造”の問題だった?不確実性を仕分けする3つのステップ

”自分は心配性だから”・”経営者に向いていないのかもしれない”と、不安を性格のせいにしてしまう方は少なくありません。しかし、経営の不安の多くは性格の問題ではなく、構造の問題かもしれません。気合いや根性で打ち消すものではなく、仕組みとして扱い、減らしていけるものだということです。

深津貴之・けんすう(古川健介) ・尾原和啓著「メタスキル」(NewsPicksパブリッシング)を読んで。

目次

経営の不安は「性格」ではなく「構造」から生まれる

まず、不安の正体から整理してみます。

不安の正体は「わからないこと」の積み上がり

不安が強い経営者ほど、実は慎重で真面目な方が多いものです。

では、その不安はどこから来るのか。

突き詰めると、不安の正体は、「わからないことが、わからないまま積み上がっている状態」であるといえます。

来月の売上がわからない。
資金がいつまで持つのかわからない。
この投資が成功するかわからない。

ひとつひとつは小さな”わからない”でも、放置されたまま重なっていくと、漠然とした大きな不安に育っていきます。

そして、漠然とした不安は、判断を遅らせ、ときに判断ミスを誘発してしまいます。

気合いでは不安は消えない

大切なのは、不安を感情の問題として扱わないこと。

「前向きに考えよう」「腹をくくろう」という精神論では、わからないことは一つも減っていないため、不安の根は残り続けます。

逆に言えば、わからないことを一つずつ「わかること」に変換していけば、性格を変えなくても不安は確実に小さくなります。

不確実性を感情ではなく構造の問題として捉え直す、という発想の転換です。

不確実性はゼロにできない。だから「上限が読める状態」を作る。

不安を構造として扱うと決めたとき、次に押さえたいのは「不確実性をゼロにしようとしない」という割り切り。

目指すのは「最悪でもここまで」が見える状態

経営に不確実性はつきものです。

景気、取引先の動向、災害や事故など、どれだけ努力しても消せないものがあります。

目指すべきは、不確実性の消滅ではなく、「最悪の場合のダメージの上限と、それが起きる条件が読める状態」です。

例えば、値段がまったく書かれていないお店には、なかなか入りづらいものです。

ところが、「どれだけ頼んでも最大で3万円」とわかっていれば、高い安いと感じるかどうかは別として、入るかどうかの判断をすることができます。

問題は、金額の高さそのものではなく、上限が読めないことなのです。

経営の意思決定も、これとまったく同じ構造をしています。

同じお金でも「置き場所の構造」で振れ幅が変わる

手元に同じ100万円があったとしても、その置き場所によって不確実性はまるで変わります。

全額を宝くじにつぎ込めば、結果は極端な当たり外れの一発勝負になる。

知人への貸付に回せば、利息は見込めますが、返ってこないリスクを自分ではコントロールできない。

また、市場全体に分散される積立型の投資信託であれば、元本保証ではないものの、値動きの振れ幅はある程度の範囲に収まりやすくなる。

金額は同じでも、構造が違えば不確実性の大きさが変わります。

これは資金繰りにもそのまま当てはまります。

売上の入金サイトと支払いサイトの組み方、借入の返済期間の設計、固定費と変動費のバランス。

これらはすべて「お金の置き場所と流れ方の構造」であり、構造を変えれば、同じ売上規模でも資金繰りの振れ幅は大きく変わるのです。

不安を仕分けする3つのステップ

それでは、具体的にどう手を動かせばよいのか。

おすすめしたいのは、頭の中の不安を具体的に取り出し、次の3ステップで仕分けすることです。

ステップ1:確実なことと不確実なことを分ける

最初にやるべきは、「すでに確定していること」と「まだわからないこと」を分けること。

例えば、毎月の家賃や人件費などの固定費、借入の返済予定、契約済みの売上は、ほぼ確実なものです。

一方で、来月の新規受注、原材料の仕入価格の変動、取引先の経営状況などは不確実なものに入ります。

この時点で、多くの方が「思っていたより確実なことが多い」と気づかれます。

漠然とした不安の中には、実はすでに確定している要素がかなり含まれていることにいるものです。

ステップ2:不確実なものを「動かせるもの」と「動かせないもの」に分ける

次に、不確実なものを、自分でコントロールできるものと、できないものに分けます。

営業活動の量、値付け、経費の使い方、入金条件の交渉は、自分で動かせる側。

景気の波、為替、得意先の倒産、災害は、自分では動かせない側。

この線引きをするだけで、「悩むべきこと」と「備えるべきこと」が分かれます。

動かせないものをいくら心配しても状況は変わりません。

動かせないものに対しては、支配ではなく備えを、というのが基本姿勢になります。

ステップ3:動かせる不確実性から、順番に潰していく

最後に、コントロール可能な不確実性から、一つずつ確実なものへ寄せていきます。

例えば、”来月の売上がわからない”のであれば、見込み客ごとの受注確度を整理するだけで、ただの不安が「上限と下限のあるレンジ」に変わったりもします。

”資金がいつまで持つかわからない”のであれば、向こう6か月の資金繰り表を作れば、危険水域に入る時期と条件が特定できます。

ポイントは、一気に正解を出そうとしないこと。

わからないことを一つ減らすたびに、判断材料が一つ増える。

この地道な積み重ねこそが、不安に強い経営の土台となります。

大きな決断ほど「わからないまま決めない」

3つのステップが身につくと、日々の不安だけでなく、大きな意思決定の質も変わってきます。

解像度を上げてから、決める

設備投資、新規出店、借入、採用。

金額が大きく、後戻りしにくい決断ほど、わからないまま勢いで決めるのは博打であり、危険です。

逆に言えば、決める前に「わからないこと」を一つずつ確かめて解像度を上げれば、決断の難易度そのものを下げられます。

例えば、店舗の出店であれば、いきなり契約するのではなく、候補地に通って時間帯ごとの人通りを確かめる。

新サービスであれば、本格展開の前に既存のお客様数社に小さく試してもらい、反応を見る。

行動を小さく刻むほど、不確実性は「調べればわかること」に変わっていきます。

借入の不安も「計算できる負担」に変えられる

借入への漠然とした恐怖も、同じ方法で扱えます。

「借金が怖い」という状態は、返済額が月々の資金繰りにどう影響するかが見えていない状態。

月々の返済額を、粗利からどれだけ賄う必要があるのか、売上に直すと何パーセントの上乗せに相当するのか。

ここまで数字に落とせば、借入は「得体の知れない重荷」ではなく「計算できる負担」になります。

そのうえで無理だと判断すれば借りなければよいですし、賄えると確認できれば、安心して攻めの投資に踏み出せます。

怖いから避けるのではなく、計算してから選ぶ。

この順番こそが、”不確実性に強い経営”の共通点だと感じています。

数字に落とした瞬間、不安は「扱える課題」に変わる

ここまでの話を、日々の経営の仕組みに落とし込んでみます。

月次の数字は「不確実性の仕分け装置」

実は、月次決算や資金繰り表は、単なる過去の記録ではありません。

「確実なこと(実績・確定費用)」と「不確実なこと(見込み・変動要素)」を、まずは明解に、時系列で毎月見える化してくれる、不安の解像度を上げる装置なのです。

さらに、売上から変動費を引いて粗利を出し、固定費と利益、返済までの流れを一枚の図(お金のブロックパズル)にして眺めると、自社のお金のどこが安定していて、どこが振れやすいのかが一目で見えてきます。

数字が苦手なほど、この「一枚で全体を見る」やり方から始めるととても効果的なのです。

全体が見えると、打ち手の優先順位が自然と決まるからです。

AIは「見落としの洗い出し役」として使う

この仕分け作業、AIとの相性も良い領域です。

新しい計画を立てるとき、AIに「この計画が失敗するとしたら何が原因か」を挙げてもらうと、自分では見たくなかったリスクや、思い込みによる見落としを先回りして洗い出せます。

人は、自分のアイデアに熱中するほど、どうしても都合の悪い可能性を小さく見積もりがちです。

だからこそ、感情を持たないAIに失敗側の視点を担当してもらい、出てきたリスクを先ほどの3ステップで仕分けする。

これだけで、計画の精度は大きく変わるのです。

まずは「確実なこと」を書き出すことから

まずは、左側に「確実なこと」、右側に「不確実なこと」を書き出してみてください。

そして右側のうち、自分で動かせるものに印をつける。

たったこれだけで、漠然とした不安の正体が見え始め、「次の一手」が驚くほど考えやすくなります。

不安は、消すものではなく、仕分けして小さくしていくもの。

その積み重ねが、どんな時代の変化にも揺らがない、潰れない経営の土台になっていくと考えられます。

経営の「不安」が「扱える課題」に変わったとき、経営はもっと前向きで、挑戦しがいのある楽しいものになります。

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この記事を書いた人

長崎で活動する
税理士、キャッシュフローコーチ

酒井寛志税理士事務所/税理士
㈱アンジェラス通り会計事務所/代表取締役

Gemini・ChatGPT・Claudeなど
×GoogleWorkspace×クラウド会計ソフトfreeeの活用法を研究する一方、
税務・資金繰り・マーケティングから
ガジェット・おすすめイベントまで、
税理士の視点で幅広く情報発信中

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