AIエージェントに仕事を任せると、同じ作業を頼んだはずなのに、日によって少し違う結果が返ってくる。原因を聞かれても、AIの判断のどこで何が起きたのかうまく説明できないといことが起こりがちです。AIエージェントに何を任せ、何をプログラムに任せるべきかという「仕組み方」の考え方について、書籍の内容をもとに考えてみたいと思います。
池田朋弘『Claude 最強のAI自動化術』(芸術新聞社)を参考にして。

「AIに全部任せる」という発想の落とし穴
同じ指示のはずなのに、結果が毎回少しずつ違う
AIエージェントに頼めば、決まった手順の作業も柔軟な判断が必要な作業も、なんでもこなしてくれるように見えます。
ここでありがちな勘違いが発生しがちで、それは「AIに頼むなら、全部AIの判断に任せるべきだ」という発想です。
実際はむしろ逆で、決まった手順で繰り返される作業はできるだけプログラムに処理させ、AIによる柔軟な判断は最小限にするほうがよりよい設計ということになります。
なぜなら、決まった手順の作業までAIにやらせると、毎回微妙にブレるためです。
AIは「だいたい正しい」を返すのが得意ですが、「100パーセント同じ」を返すのは苦手なのです。
経理で1円ズレては困りますし、毎回フォーマットが違う議事録も実用的ではありません。
一方でプログラムは、原則として決められた手順どおりに動くため、同じ入力に対しては必ず同じ結果を返します。
コストと速度、そして説明責任という壁
もうひとつの理由が、コストと速度の問題です。
決まった手順の作業まですべてAIに通すと、処理時間が伸び、コストも積み上がります。プログラムなら瞬時に処理できる作業においてもです。
そして、私自身が特に大事だと感じているのが、説明可能性の問題です。
「なぜこの処理が走ったのか」を、プログラムなら明確に説明でき、検証可能です。
しかし、AIに任せた部分は判断の根拠が見えにくくなります。
会計や法務のように説明責任が重い領域では、決まった手順の作業をできるだけプログラムに寄せておくほど、安心して運用できます。
トラブルが起きたときの調査もしやすくなるからです。

「柔軟パート」と「固定パート」を分けるという考え方
こう考えると、AIエージェントが行う仕事は、性質の異なる2つに分けて捉えられます。
1つは、毎回内容が変わり、思考や創造性が必要になる部分。
文章の下書きを考える、資料からポイントを抜き出す、状況に応じて次の一手を判断する、といった業務がここに入ります。
人間のように柔軟な対応ができる一方で、誤った内容が出るリスクも抱えます。
もう1つは、決まりきった手順で繰り返される部分。
ファイルからデータを取り出す、決まった形式で登録する、通知を送る、といった処理。
プログラムによって、毎回必ず同じ処理を、圧倒的に速く安定して行えます。
大切なのは、この2つを対立するものではなく、役割分担として捉えることだといえます。
思考や判断が必要な場面ではAIに柔軟に働いてもらい、繰り返しの多い場面ではプログラムに正確に働いてもらう。
この線引きができているかどうかで、AIエージェントへの指示出しの精度や、仕組みづくりの質が大きく変わってきそうです。

「一人二役」をこなすAIと、仕組み方の選択肢
面白いのは、AIエージェント自身が「一人二役」を担うという点です。
思考や判断が必要な場面では、AIエージェント自身がその都度考えて仕事をします。
一方、決まりきった手順の場面では、まずAIエージェントがその手順を実行するプログラムを作り、2回目以降はそのプログラムを実行するだけになります。
非エンジニアである私たちは、なかなか決まりきった手順のプログラムを自分で組むことはできません。
しかしながら、そのプログラム自体はAIエージェントが作ってくれるのです。
柔軟な場面では自分で考え、決まりきった場面ではまず道具を作り、その道具を使う。
1つのAIエージェントが、この2つの役割を行き来します。
この整理を知ってから、今の自分が作っている仕組みは、どこが柔軟パートで、どこが固定パートなのかを意識するようになりました。
そう考えていくと、決まりきった手順の実行先にも選択肢が複数あることに気づきます。
生成AIにその都度、処理してもらう方法もあれば、Google Workspace内で完結する定型作業ならGASで自動化する方法もありますし、完璧ではないもののAIエージェントにもPython使用を義務化しておく方法もあります。
どれか一つが正解というより、決まりきった手順のなかでも「どの道具に任せるのが向いているか」という選択肢が複数あると感じています。
「ここは決まりきった処理だから仕組みに任せよう」「ここは毎回状況が変わるからAIに判断してもらおう」と自分の業務を仕分ける視点を持つことが、AIエージェントとの付き合い方を一段深めてくれる考え方だと感じます。
