過去のメールのやり取りを探し、面談メモを開き、業界の動向を調べ、去年使ったテンプレートを引っ張り出す。そこまで揃えてから、ようやくClaude Codeに投げる。この前半部分が人間の仕事として残っている限り、時短の効果は限られたものになってしまいます。材料の置き場所そのものをClaude Codeに渡すと任せ方が一段変わります。
池田朋弘『Claude 最強のAI自動化術』(芸術新聞社)を参考にして。
AIに渡すのは「指示」ではなく「材料のありか」
提案書1本に必要な材料は、社内に散らばっている
顧客向けの提案書を1本作る場面を考えてみると、必要になるのは、その相手と交わしたメールのやり取り、訪問時の議事録、社内に蓄積された顧客情報、そして業界の最新動向。さらに、自社の体裁が整ったテンプレートも要ります。
そして、これらはそれぞれ別の場所にあります。
例えば、メールはGmail、議事録や顧客データベースはNotion、業界動向はWeb、テンプレートはパソコンのフォルダ。
この分散こそが、資料作成に時間がかかる正体ともいえます。

接続しておけば、AIが自分で取りに行く
Claude Codeのようなエージェント型のAIでは、Gmail・Notion・Web検索といった情報源をあらかじめ接続しておくことができます。
書籍で紹介されていた例では、GmailとNotionの2つをコネクタでつなぎ、テンプレートは作業フォルダに置いた状態から始めています。
この準備をしておくと、指示の内容が変わります。
「このメールの内容を踏まえて」と本文を貼り付けるのではなく、「Gmailでこの会社とのやり取りを確認して」と伝えるだけで済むようになります。
調べる場所を明示することの意味
書籍の例では、調査ソースを「Gmail」「Notion」「Web」の3点として指示文の中で明示していました。
これは、AIに探す範囲を教える行為でもあります。
どこを見ればいいかが決まっていれば、AIは迷わず取りに行けます。
逆に指定がなければ、手元の情報だけで書き始めてしまう可能性があります。
私たちがスタッフに仕事を頼むときも、「去年のファイルとお客様からのメールを見て」と場所を添えるかどうかで、出てくる成果物の精度が変わります。
裏を返すと、材料のありかを言葉にできない業務は、AIにも渡しにくいということになります。
どのフォルダの何を見て、どの資料を根拠にしているのか。
頭の中だけで処理している部分が多い仕事ほど、まずそこを書き出す作業が必要になると思われます。
複数の調べものを同時に走らせ、ゼロからは書かせない
複数の調査が並行して動く
指示を送ると、Claude Codeはサブエージェントと呼ばれる分身を複数立ち上げ、Gmailの調査・Notionの調査・業界動向の調査を同時に進めます。
人間が1つずつ順番に開いていた作業が、同時に進むことになります。
作業中は、進行状況が「情報収集中」「テンプレート解析中」「提案内容を設計・作成」の3段階で表示されるようにしておくと、いま何をしているかが見える形になっています。
時間のかかる作業ほど、この可視化はありがたいことです。
白紙からではなく、既存の型を書き換えさせる
もう1つの工夫が、最終的な成果物の作り方です。
ゼロから自由に書かせるのではなく、既存のパワーポイントのテンプレートをベースにし、会社名・課題・提案内容を書き換えていく形で指示しています。
これは実務的にとても大きな違いです。
白紙から作らせてしまうと、体裁を整え直す作業が後から発生することになります。
あらかじめ既存の型を渡しておけば、デザインは自社のまま、中身だけが今回の相手向けに入れ替わった状態で出てきます。

依頼が大きすぎると精度が落ちる
一度に多くを頼みすぎると、AIが扱える情報量の上限に当たることがあります。
書籍でも、その状態になると処理速度が落ち、精度も下がりがちだと指摘されていました。
対策として挙げられていたのは2つ。
1つ目は、調査を分身に分担させること。
2つ目は、依頼そのものを小分けにして送ること。
1人で全部抱えるとパンクするので担当を分けるという発想は、人の組織で起きていることとよく似ていると感じます。
依頼を小分けにするやり方は、初めてその業務をAIに任せるときにも向いています。
一度に全工程を渡してしまうと、どこでずれたのかが分からなくなりますし、調査だけ、構成だけ、と区切って結果を確かめながら進めれば、任せられる範囲を自分で見極めていくことができます。
ドラフトができてからが、人間の出番
完成品を直す前に、テキストで合意する
提案書のドラフトが上がったら、そこからが人の仕事になります。
まずAIに全スライドの中身を提示してもらい、内容の合意を取ってから書き換えに進むほうがよいと思われます。
パワーポイントのファイルは、編集にも確認にも時間がかかりますし、文字だけの状態ですり合わせてから清書に入るという順序は、資料作成の現場感覚にも合っていると思われます。
今回のやり方を、次回のためにファイルへ残す
最後の仕上げは、今回のやり方そのものを記録に残すことです。
作業フォルダの中にCLAUDE.mdという指示書のファイルを置き、「今後も同様にしたいので、ポイントをまとめておいて」と一言頼むだけで、AIは自分が採った手順とつまずいた点を整理して書き込んでくれます。
手作業では面倒で残さないような細部まで自動で残るのが、この工程の価値だと考えられます。
次に別の顧客向けの提案書を作るときには、この指示書を読み込んだ状態からスタートできます。
書籍で紹介されていた指示書には、調査に使う具体的なツールの呼び出し方や、成果物を生成する前にテキストで内容をすり合わせるという段取りまで書き込まれていました。
手順書というより、その業務の進め方そのものの記録に近いものです。
「毎回同じ順番で進めているのにどこにも書いていない手順」は、記録に残す価値がある部分だと思われます。

1社目に時間をかける意味
書籍では、この流れを3つのラウンドとして整理していました。
第1ラウンドはAIにドラフトを作らせる段階。
第2ラウンドは人が中身を確認し、対話で直していく段階。
第3ラウンドは、完了後にワークフローを指示書へ保存する段階です。
最初の1社目は、むしろ時間がかかります。
それでも、その作業時間そのものが次回以降のテンプレートとして残ることが、複数のツールをつないで仕事を任せる最大の意味なのだろうと思われます。
