AIに仕事を任せられるかどうかを考えるとき、多くの人は「今日、どれくらい正確に動くか」を基準にしてしまいます。本当に決めるべきなのは「AIをどこまで信じるか」ではなく、「どこを人が見るか」であると考えられます。
池田朋弘『Claude 最強のAI自動化術』(芸術新聞社)を参考にして。
「信じられるかどうか」で判断すると迷子になる
仕事を実際に回しながら、AIが出した答えを確認し、間違いを直し、うまくいったやり方を残していく。
このサイクルをどれだけ回せたかで、任せられる範囲は少しずつ広がっていきます。

問うべきは、「今の時点で、どこに人の目を残しておくべきか」という一点です。
ここが定まれば、AI活用は「賭け」ではなく「設計」の話に変わります。
どこに“人が見る場所”を置くか
人が確認する場所を決めるときの基本は、リスクの大きさに応じて確認の深さを変えることであると考えられます。
お金が動く、外部に何かが送られる、後戻りが難しい。
こうした場面では確認を厚めにし、逆に社内向けのメモ整理や下書き作成のように、やり直しが効く作業では確認を軽くしてよい、という考え方です。
当事務所でも、この線引きをかなり具体的に決めています。
例えば、仕訳登録では、AIが仕訳を登録した後、必ず別のAIに結果だけを見直させる工程を挟んでいます。
「AIが登録した」という事実と、「会計データに正しく計上された」という事実は、当然、別物です。
作業する係と確認する係を分けるのは、人間の経理チームで昔からやってきたダブルチェックとまったく同じ発想です。
それをAI同士の役割分担に置き換えただけ、というのが近いところです。
そのうえで、書き込みを伴う操作の最終承認、金額の大きい取引、税務上の判断が必要な確認事項の3つは、必ず人が最後に見るポイントとして定番化させています。
また、確認した内容をその場で終わらせず、記録として残す運用も有用です。
毎月の帳簿チェックで気になった点は、「なぜ引っかかったのか」「どう判断したのか」まで記録するようにしています。
これを積み重ねると、書いている時点では地味な作業ログでしかなかったものが、顧問先ごとの傾向をつかむための土台に育っていくのです。

お金を動かす、社外に発信する、取り返しがつきにくい。
そうした場面をまず洗い出し、そこに人のチェックポイントを置く。
それ以外は思い切ってAIに任せてしまうような発想が、結果として自動化のメリットを最大限に引き出せそうです。
確認ポイントは、減らすものではなく動かすもの
確認ポイントを一度決めたら終わり、というわけにはいきません。
気をつけたいのは、確認そのものが形だけになってしまうことです。
AIが毎回「これでいいですか」と聞いてきて、こちらが毎回「はい」と答えるだけの運用になると、確認を置いている意味がほとんどなくなります。
これを避けるコツは、大きく3つあると感じています。
まず、確認するたびに判断材料を一緒に出してもらうことです。
「この取引はこういう理由でこの科目にしました」と根拠が添えられていれば、人の側もきちんと考えて判断できます。
次に、確認する場所を全部ではなくグレーゾーンだけに絞ることです。
明らかに白黒がはっきりしているものまで毎回見ていると、集中力が落ちて、本当に見るべき微妙な判断を見逃してしまいます。
最後に、運用の中で確認ポイントを少しずつ動かしていくことです。
最初はすべての処理を確認していたとしても、精度が安定してきたら、最終的な総量チェックだけにする、金額が一定以上の取引だけ確認する、というように絞り込んでいく。
逆に、想定外のミスが見つかったら、確認する範囲を増やす方向に戻す。
固定の手順として決め切ってしまうのではなく、運用しながら調整し続けるものだと捉えておくと、長く付き合える仕組みになります。

大事なのは、「今、どこに人の目を置いているか」を自分の言葉で説明できる状態にしておくことだと感じています。
