Claude Codeへの指示書は、最初から完璧に作る必要はなく、使いながら少しずつ育てていくというスタンスで十分で、最初から漏れのない指示書を作ろうとして手が止まってしまう人も少なくありません。
池田朋弘『Claude 最強のAI自動化術』(芸術新聞社)を参考にして。
最初は数行のメモで十分
同じ場所で繰り返すと指示書が勝手に育つ
Claude Codeには、決まった作業のやり方をあらかじめ書いておくための指示書(CLAUDE.md)を、全体のほか、そのプロジェクトフォルダごとに設定しておくことができます。
ここでのコツは、特定の作業についてはいつも同じフォルダの中で行うことです。
例えば、毎月の請求書処理を専用フォルダで繰り返していると、「金額の表記はカンマ区切りにして」「振込先はこの順番で並べて」といった、細かいけれど毎回気になる点が見えてきます。
そのたびに一行、指示書へ書き足していけば、そのフォルダで動くAIだけが、その仕事に合わせて少しずつ最適化されていきます。
1年前に作ったフォルダと、昨日作ったばかりのフォルダとでは、AIの仕上がりの精度がまるで違う、ということも珍しくありません。
フォルダを分けているだけで、指示書自体は複雑な仕組みではなくただのテキストファイルであり、特別なツールも専門知識も要必要なく、誰でも今日から始めることができます。
完成させてから使うのではなく、使いながら仕上げる
指示書というと、業務マニュアルのように最初にきっちり作り込むものだと考えがちですが、実際にClaude Codeと仕事をしていて感じるのは、順番はむしろ逆で、最初は数行のメモから始めてよいということ。
実際に進めながら、うまく伝わらなかった点、毎回同じ質問をされて面倒だった点を、その都度一行書き足していくだけで、指示書は仕事と一緒に育っていくのです。
書き残した分だけ、次に同じ作業を頼んだときの動きは明らかに良くなるので、育てる手間はそのまま次回以降の時間として返ってきます。
何を書き足せばいいか迷ったら、次のようなことをそのまま一行にしてみるとよさそうです。
- 毎回同じように聞き返されて面倒だったこと
- 出力をやり直すことになった原因
- 自分がいつも好んで使っている言い回しやフォーマット
どれも、仕事をしている最中に感じた小さな引っかかりで、それを見逃さずに書き足していくことが、指示書を育てる一番の近道になります。

「これ、他でも使える」と思った瞬間が昇格のサイン
部署マニュアルと研修プログラムの違い
フォルダの中で指示書を育てていくと、あるとき「このやり方、別の仕事でも使えそうだ」と感じる瞬間があります。
これは、指示書を一段上の「資産」に昇格させるタイミングです。
フォルダ専用の指示書と、複数の場面で使い回せる指示書は、そもそも役割が違っています。
前者は、「部署マニュアル」のようなものと例えられています。
その現場でしか通用しない手順をまとめたものです。
後者は、「研修プログラム」のようなものと例えられています。
担当者や部署が変わっても通用する型を、教育パッケージとして独立させたもの。
例えば、「報告書の数字はこの順番で並べる」「見積書はこの形式で作る」というルールが、1つのフォルダだけでなく複数の仕事に共通して有用であると分かれば、それは研修プログラム側へ引き上げるべきノウハウということになります。
逆に、まだ1つの現場でしか試していない段階で汎用化を急いでしまうと、実際には使いにくい抽象的なルールになってしまうことも少なくありません。
昇格のサインは、こんな形で現れる
このタイミングは、意識していないと見過ごしてしまいます。
目安になるのは、次のような瞬間です。
- 別の仕事のフォルダでも、同じ指示をもう一度書こうとしている自分に気づいたとき
- 「このクライアントでは」ではなく「たいていの場合は」という言葉で説明したくなったとき
- 同じ注意点を、違う相手に何度も口頭で伝えている自覚があるとき
こうしたことを感じたら、フォルダ専用のメモを、複数の場面で使い回せる形に書き直すタイミングということになります。
まずは目の前の仕事を指示書で型にしてみて、複数の場面で通用しそうと感じた瞬間に昇格させる。
この順番を守ると、Claude Codeに教え込んだノウハウは現場ごとにバラバラに増えるのではなく、階層を持って積み上がっていくことになります。
最初から「どの仕事にも通用する完璧なルール集」を目指してしまうと、実際にはほとんど使われない項目ばかりが並ぶ分厚い文書ができあがりがちで、結果、誰も読まない資料が増えるだけで終わってしまいます。

事務所の中でも、同じサイクルが回っている
クライアントごとのメモから、事務所共通のルールへ
この育て方は、当事務所の運用でも同じ形で起きています。
クライアントごとの細かい取り決め、例えば、数字の並べ方や特定の勘定科目の扱い方は、まずそのクライアント専用のメモ(.memoファイル)として書き残していきます。
似たような判断を別のクライアントの仕事でも下すようになった段階で、そのメモを事務所全体で使う共通のルールへと書き直し、担当が変わっても迷わず同じ判断ができるようにしています。
確認しておきたい事項をその都度メモに残すようにしただけで、いつの間にか事務所としての判断基準がまとまっていったという感覚に近い感じです。
担当が交代になった案件でも、そのフォルダの指示書を読めば、前任者と同じ判断をそのまま引き継げるようになります。
以前は担当者の頭の中にしかなかった判断基準が、フォルダを開けば誰でも確認できる状態になっているという違いは想像以上に大きいものです。
指示書を育てるという発想の普遍性
目の前の1件をこなしながら気づいたことだけを書き残し、繰り返し役に立つと分かったものだけを共通ルールへ昇格させていく。
この積み重ね方をしているからこそ、社内のルールは実際に使われる知識だけで構成されています。
指示書を育てるという発想は、AIエージェントに限った話ではなく、業務のノウハウをどう仕組み化していくかという、より普遍的な考え方であるといえます。
フォルダ単位で小さく試し、効いたものだけを共通の資産へ引き上げる。
この順番さえ守っていれば、Claude Codeへの指示書は特別な設計図を用意しなくても、日々の仕事の中で自然に育っていくものなのだと感じます。

