質問には、類型があり、①正答のある質問(誰が答えても内容が変わらないもの)、②正答のない質問(正答が複数あり、本人の納得するところが答えとなる質問)、③①②がミックスとなった質問(一部は正答があり、一部には正答のない質問)、に分けることができますが、「①正答のある質問(誰が答えても内容が変わらないもの)」にどう答えるべきでしょうか。
東山紘久著「プロカウンセラーの聞く技術」(創元社) を読んで実践して以来15年、学んだこと。
「具体的な助言」でないと相手には届かない
正答のある質問(誰が答えても内容が変わらないもの)に対しては、“具体的な情報”でなければ、相手に届きません。
その人の行動をわかった上で、「端的で具体的に留意が必要な助言」でなければ相手に届きません。
逆に、その人のことを分かっておらず、誰にでも当てはまるような標語のような助言や、相手のためではなく自分の不安の解消のために発する主観的な助言というものは、相手には届かないのです。
自身が何かに迷っていて人に相談したとき、世間一般的に分かりきった標語のような助言をもらっても、的外れのように感じ、ほぼ心のなかには入ってこないものです。
また、自身に関係のない相手の不安からくる助言(車に気をつけて、など)についても、相手は心配しているんだなという心情は伝わりますが、内容はほぼ心のなかには入ってこないのです。
相手のことを分かった上での行動に対する具体的な留意点であったり、考え抜いた上での苦しいなかで生き抜く知恵であったりする方が、安心感が感じられ、内容が心に染み渡ります。
大事なのは「平等性」
しかし、同じ言葉でも相手に響かないときがあります。
そのようなときはえてして、人を悩みを聞いている自分はその人より偉いのだと思ってしまっているときです。
相手が「上から目線」と感じてしまえば、やはり同じ言葉でも相手に入っていかないのです。
聞き手は話し手との「平等性」を意識し、話し手と聞き手がお互いの人格を尊敬している必要があります。
「平等性」を持って「相手のことを分かろうとすること」
相手のことを分かろうとすれば、聞き手は十分にじっくり相手の話を聞き、相手のことを思い、標語のような分かりきった言葉や自分の不安から来るような言葉は避け、その人個別の状況のなかで端的で具体的に役に立つような言葉を添える必要があります。
これはとても難しいことです。
相手の苦しい状況に共感すればするほど、相手の苦しい心情が自分にも伝わり、物事が簡単でない状況なのだな、ということが分かります。
とはいえ、誰でも分かっているような標語や自分の不安からくる言葉であっては意味がないのです。
このような状況で、相手の心に届くような助言など、なかなかできるものではありません。
ですので、助言するのだという意識で話を聞くというよりも、じっくりと相手の話を聞いていくことで、”話し手が自分で切り抜ける知恵を見つけ出す”お手伝いをしていくことをひたすらに積み重ねていくほかないのだと思います。
ある晴れた日の島原城裏入り口。見えているのは天守閣ではなく櫓です。天守閣は、思っているより大きかったです。