小売業などの店舗型の業種の場合、”何人のスタッフでお店を回している状態”が適正といえる状況なのか、経営数字の観点から考えてみます。
「労働分配率」とは
会社が営業活動を行うことによって稼いだ「売上」や「粗利」から、「人件費」へはどの程度回している状態が適正値の目安といえるのかということ、ぜひとも把握しておきたいところです。
目安よりも多く回しているようであれば、人員配置を見直したり、生産性を上げるための目標を考えたりするきっかけを持つことができます。また、これから、この人員でいくらの売上高を目標とすべきかを把握することができます。
一方、目安よりも少なく回しているようであれば、店舗スタッフは多忙すぎて疲弊していないか、増員すべきか、賞与・手当・昇給などで報いるべきかを検討するきっかけを持つことができます。
会社が営業活動を行うことにより稼いだ「粗利」から「人件費」へどの程度を回しているかの比率を、「労働分配率」といいます。
お金のブロックパズルで見ると、ひと目でイメージすることが可能です。
この比率の目安は、業種によっても異なるものの、おおむね「50%(40%~60%)」程度といわれています。
人ありきの業種であれば60%が適正といえるでしょうし、人に依存しなくとも済む業種であれば40%が目安となる比率といったところです。
また、人件費といっても色々です。
店舗スタッフへの人件費のほか、常時店舗にいないこともある役員への人件費、直接店舗での売上に関与していなくとも会社の屋台骨を支えている事務スタッフへの人件費も含まれます。
そう考えると、店舗スタッフの人件費への労働分配率で目安となる比率は、おおむね「35~40%」程度といわれています。
これはあくまで”目安”であって、上記でなければならないわけではありません。
例えば、既存店舗の売上を伸ばしていきたい場合、既存スタッフに余裕のある状態を作らなければいけないという場合があると思います。
その余裕を作るため、戦略的に1名増員し、力を合わせてさらなる売上増加を狙っていくシーンのことも考えられます。
あるいは、既存店舗の労働生産性(1人あたりが担っている粗利)を図るときのひとつの物差しとして使うことも可能です。
店舗スタッフ1人あたりが担う粗利は?
労働分配率がイメージできると、「1店舗あたりどの程度の人件費をかけている状態が、目安の状態といえるか」ということを知ることができます。
既存の店舗であれば、1ヶ月あたりどのくらいの売上を上げている店舗なのかという実績値があるため、その「売上」に対する「粗利」がいくらなのか、その「粗利」に「労働分配率50%」をかけると、「人件費」としていくらかけるべきかが分かります。
さらに、店舗スタッフへの労働分配率が40%だとすると、その目安となる人件費を1人あたりの給与で割ると、配置の目安となる人員数が見えてきます。
つまり、以下のような順番です。
「実績の売上」
→(×粗利率)→「実績の粗利」
→(×労働分配率)→「かけるべき人件費」
→(÷月給(役員・事務スタッフ分も考慮))
→「かけられる人員数」
あるいは、店舗に必要と思われるスタッフ数を先に仮定し、上記の順番を逆算していくことで、必要となる「売上」を把握することもできます。
例)店舗スタッフ2名配置するとして、目安となる売上はいくらか
複数店舗を持つ場合で、新しく店舗を出すとしたときに、”目標とすべき1ヶ月あたりの売上”を知ることもできます。
例えば、店舗スタッフとして2名(人件費:20万円×2)配置するとします。
ここで、「人件費」の試算としては、店舗スタッフのほか、役員や事務スタッフの人件費も賄う必要もあります。
つまり、以下のように考えることができます。
店舗スタッフの人件費40万円(20万円×2名)+役員・事務スタッフの人件費10万円=合計50万円(図①)
稼がなければならない人件費が合計50万円だとすると、労働分配率50%で考える場合、”目標とすべき「粗利」”は100万円ということが分かります(②)。
”目標とすべき「粗利」”が100万円だとして、自社商品の粗利率を把握できていれば、その関係性から”目標とすべき「売上」”は167万円ということが分かります(③)。
上記のように、順序立てて考えていくことで、「お店には何人配置するのが適正か」ということを把握することができます。