事業において、手元現預金はいくらあると安心なのかについて。
諸留誕著「顧問先の銀行融資支援スキル 実装ハンドブック」(日本法令)を参考にして。
お金のことで悩まずに事業をする
事業において、お金のことはつきものです。
ただ”好き”・”やりたい”というだけで事業を継続することはできず、お金がなければ事業を継続することができないということが現実です。
一方で、お金のためだけに事業を行うのも虚しく、健康な気持ちで事業を継続していくことができません。
”やりがい”・”社会的な意義”・”社会や他人の役に立とうとする気持ちこそが、事業に核になっているものです。
「事業にとってお金との距離感をどのように取るか」は成功の鍵・長期継続の秘訣ともいえます。
お金との距離感は近すぎてもよい事業はできないものですし、遠すぎてもよい事業はできないように思われます。
少なくとも、過剰にお金のことで悩みながら事業をすることは、その事業に集中することもできないものですし、あるいは夜も眠れないといったことにもなりがちです。
過剰にお金のことで悩まずに事業をするにはどうすればよいのか。
手元に常に安心できる程度の資金があれば、少なくとも過剰に悩むことなく、健全に事業を継続していくことができるものと思われます。
資金繰りがきつい・余裕があるの目安
では、”手元に常に安心できる程度の資金”とは、具体的にどれくらいなのか。
あれば越したことはないものですが、かといって現実的に不可能な金額では考える意味もないものです。
100万円なのか、1,000万円なのか、1億円なのか。
これは一概に言うことが難しいといえます。
なぜなら、個々の事業規模によるためです。
毎月、収入が2,000万円・支払も2,000万円ある会社にとっては、100万円ではまったく足りないでしょうし、1億円であれば十分かもしれません。
つまり、自社の事業規模を把握したうえで、”手元に常に安心できる程度の資金”の目安を把握しておく必要があります。
最も簡単につかみやすいのは、月商に対して手元現預金がどれくらいあるとよいか、という尺度です。
1ヶ月に回るお金の目安は月商で把握することができますし、その1ヶ月で回るお金をどれくらいカバーできるほどの手元現預金なのかということです。
もしも、手元現預金が1ヶ月分の月商にも満たないほどであると、その規模分の経費などの支払いがおぼつかない可能性が高く、心配になります。もしも売上金の入金が滞れば、支払いも即滞る確率が非常に高いためです。
手元現預金はいくらあると安心?
上記のとおり、月商1ヶ月分の手元現預金では、危険度は高いといえます。
月商の2ヶ月~3ヶ月分であれば、当面は困らなそうですが、コロナ禍などの危機が来ると困ってしまいそうです。融資申請しようにも、混み合っていたりすると着金まで2ヶ月ほどかかってしまうこともあります。
月商の6ヶ月分ほどあれば、よほどのことがなければ困らなそうです。万が一、経営者にもしものことがあっても6ヶ月分ほどはあれば方針を考えることもできます。
手元現預金 | 余裕度合い |
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月商の1ヶ月分未満 | 危険な状態 |
月商の1ヶ月分~3ヶ月分程度 | 当面、心配なし |
月商の6ヶ月分 | 十分な水準 |