売上を上げれば資金的に楽になる、と思いきや、そうとはいえません。
井上和弘著「社内埋蔵金をお金にする知恵」(中経出版)を参考として。
”売上が上がれば経営は楽になる”は勘違い
”売上が上がれば、経営は楽になる”
陥りがちな錯覚として挙げられています。
確かに、「0→1」のスタートにおいては、売上が上がれば手元にお金が手に入る実感を感じます。
しかし、「1→」においては、その成功体験が邪魔をしてしまうのです。
傾向:”売上が上がれば資金が不足する”
”売上が上がれば、経営は楽になる”はどこが勘違いなのか。
”売上が上がれば上がるほど、仕入が増え、抱える在庫が増え、売掛債権が増え、人件費が増え、設備投資が増える”という事実です。
売上が上がり、それがそのまま資金として返ってくるのであれば、イメージ通り、楽になります。
ただ、実際には、売上が上がっていくにあたって、イメージ通りにはならないいくつものプロセスが存在します。
- これまでよりも仕入資金が必要
- 仕入れてもすぐに売れるわけではなく、在庫が増える(投下資金が回収されないまま滞留している)
- 契約になってもまずは売掛債権となり、すぐには資金化されない
- より売上を上げるためには、人件費が増加する
- より売上を上げるためには、設備投資が必要な場合がある
”お金が増えた”と実感するまでに、非常に時間がかかることが分かります。
「お金」→「仕入(→在庫)」・「人件費」・「設備投資」→「売掛債権」→「お金」
考え方を変える
まずは、”売上が上がれば、経営は楽になる”といえるほど構造が簡単ではないことを理解しておきたいところです。
井上和弘著「社内埋蔵金をお金にする知恵」(中経出版)においては、「お金」に対して、以下のように考えるよう述べられています。
- 預金残高を見るときは、借入金残高も一緒に見る(自分のお金と他人のお金の区別をつける)
- 業績がよいときには、借入金の繰上返済をする(手元資金が多いと陥りがちな罠を取り去る)
- 回収を考えて販売する(回収までの期間は?、確実に回収できるか?)
- 設備投資にあたっては、返済を考える(月々の返済は?)
ピーター・F・ドラッカーの言葉として、以下が紹介されていました。
ベンチャーの挫折の原因はいつも同じである。
第一に、今日のための現金がない。第二に、事業拡大のための資金がない。
第三に、支出や在庫や債権を管理できない。
資金を増やそうと思うと、単に「売上」だけではなく「設備投資」「人件費管理」「在庫管理」「債権管理」などにも十分に気を配らなければならないということです。