専門職や研究と相性がよい生成AIツールと考える「NotebookLM」。
税理士にとっては、定型性の強い業務である年末調整業務・法定調書業務・償却資産申告業務のナレッジの整理・取得・共有に役立ちそうです。
NotebookLMとは
NotebookLMとは、Googleが出している生成AIツールです。
他の生成AIとの違いとして、専門職や研究ととても相性がよいとされています。
それは、その仕組みにあります。
- ユーザーが情報源(信頼性の高い資料、法令、論文、判例など)を指定したり追加したり削除したりすることが容易にできるため、それをもとにテキスト生成される情報や要約に信頼を置くことができる
- 入れることができる情報源の形式がとても幅広い(テキスト、PDF、Googleドキュメント(Word)、Googleスライド(Powerpoint)、ウェブサイト、Youtube、音声ファイルなど)
- 無料で使うことができる
- 要約や質問応答の生成が滑らかで速い(Gemini1.5が使われている)
- テキストには根拠のリンクがつくため、原資料の確認を容易に行うことができる
- ユーザーのデータを安全に管理するため、Googleのストレージと最新の暗号化技術が採用されている
- ユーザーのデータはAIの学習対象にしないポリシーが取られている
- ユーザーの範囲や権限を一覧することができ、簡単にコントロールすることができる
- リアルタイムで共有することができる
- 履歴追跡機能が充実している
NotebookLMの画面
- 左上:自分で選んで根拠資料(ソース)を追加・削除できる
- 下真ん中:質問することができる
- 下右:”目次”・”よくある質問”などを自動生成してくれる
NotebookLMの使い方
Googleアカウントがあれば誰でも無料で使用可能。
年末調整業務・法定調書業務・償却資産申告業務で使ってみる
税理士にとっては、定型性の強い業務である年末調整業務・法定調書業務・償却資産申告業務のナレッジの整理・取得・共有に役立ちそうです。
年末調整
国税庁の「年末調整のしかた」PDFを読み込ませてみる
年末調整においては、国税庁の「年末調整のしかた」が最もコンパクトで正確・網羅的な資料といえます。
これを読み込ませてみました。
「よくある質問」を作ってみる
創業したてなどのお客様で、年末調整について分からない場合の問合せ対応などで使うことができます。
専門的な言葉がやや平易になりました(それでも創業したてのお客様には分かりづらいかもレベル)。
ただ、専門職にとってはこれをベースに必要な部分をさらに噛み砕けばいいという基準が分かりますし、お客様にとってはより”分かりやすい”という価値を届けることができそうなイメージを持つことができます。
ケース別に質問してみる
ケース別に、”こんなときどうすればよかったっけ”ということを確認していくことができます。
「年末調整のしかた」のどのあたりを根拠にしているかを確認することも瞬時に行うことができます。
さらに「年末調整のしかた」の原文にあたりたいという場合も、どこを読めばよいのかの当たりをつけることも容易です。
法定調書業務
国税庁の「源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」PDFを読み込ませてみる
「よくある質問」を作ってみる
ケース別に質問してみる
毎年どうだったっけ?となりがちな質問にも、太字や例を交え、とても分かりやすく解説してくれました。
脚注番号をクリックすると、瞬時に根拠となる文章を示してくれました。
償却資産申告業務
長崎市の「償却資産申告の手引き」PDFを読み込ませてみる
「よくある質問」を作ってみる
ケース別に質問してみる
これらについては、2問とも誤った回答が生成されました。
これは、申告の必要がない資産について、原資料には、”一括償却資産”という表現ではなく、”取得価額が20万円未満の償却資産を、税務会計上3年で一括償却しているもの”という表現に記載されていることから回答を誤ったと考えられます。
また、内装工事についても、”所有者が施工したもの/賃借人等が施工したもの”についての言及までは至らずという感じです。
いずれも、元々知っているか、原文を当たって確認していれば回避できるのですが、現状では、やはり人によるファクトチェック(事実確認、原資料チェック)はマストです。
あるいは、他の自治体の手引きなどの他資料を追加することで展開や回答が変わるかもしれません。
使用感
- とても便利
- Youtubeや音声データを読み込ませることができるのはとてもよい
- 資料を限定することができるのでファクトチェックがしやすく、ある程度の信頼もできる
- 自分の知識をスタンダードにして説明するのではなく、”専門用語→要約”をベースにしてその表現をスタンダードと捉え、そこから噛み砕き具合を調整することで、よりお客様に”分かりやすさ”という価値を提供することができるイメージを持つことができそう
- 情報は完全には信用できない(誤りの生成は不可避)
- 社内のナレッジ共有にとても役立つ(原文に当たる大切さ・調べ方を知ること含め)
- ウェブサイトを読み込ませることは可能だが、ウェブサイトのなかのリンクの中身までは読み込めない(あくまで、指定したページの中のテキストをデータベース化している)
- 元々知識のある人にとってはファクトチェックが容易なため、むしろピンポイントや網羅的な知識の補強やお客様への伝え方の工夫(目線、言い回し、例え)をする余地が生まれる分、専門職としての能力にブーストをかけることができる
- 元々知識のない人にとっては、まずファクトチェックが利かないため、このブースターを使いこなすことは難しい