「孫氏の兵法」から学べること。
36)勢編/わざと隙を見せて有効な迎撃をする
故善動敵者、形之敵必從之、予之敵必取之、以利動之、以卒待之
故に善く敵を動かす者は、これに形すれば敵必ず之に従う。
之に予(あた)うれば、敵必ず之を取る。利を以て之を動かし、卒を以て之を待つ。
うまく敵を誘導する者は、敵にわざとこちらの隙を見せて敵は必ず引っかかるようにするものである。
また、敵に何らかの利益を見せれば敵は必ずその利益を取りに来る。利益をもって誘導したうえで、こちらはあらかじめ待ち構えた態勢から攻撃するのである。
37)勢編/組織で勢いを作る
故善戰者、求之於勢、不責於人、故能擇人而任勢、任勢者、其戰人也、如轉木石、木石之性、安則靜、危則動、方則止、圓則行、故善戰人之勢、如轉圓石於千仞之山者、勢也
故に善く戦う者は、これを勢に求めて人に責(もと)めず。故に能く人を択(えら)びて勢に任ず。
勢に任ずる者は、其の人を戦わしむるや、木石を転ずるが如し。
木石の性は、安なれば則ち静かに、危なれば則ち動き、方なれば則ち止まり、円なれば則ち行く。故に善く人を戦わしむるの勢、円石を千仞(せんじん)の山に転ずるが如きは、勢なり。
戦いがうまい者は、その勝利を組織の勢いに求めるが、兵士個人にはそれを求めることはない。
そうすることで、人を適切に配置することができ、組織の勢いに任せることができるのである。
人を勢いに巻き込んで戦わせる様子は、あたかも木や石を転がすようなものである。
木や石の性質として、安定している場所に置けば静止するが、傾斜している場所に置けば動き出すものである。また、角ばっていれば止まり、丸ければ転がるのである。
従って、戦いがうまい者が兵士に戦わせるときの”勢い”というのは、丸い石を高い山から転がすようなものなのである。これこそが”勢い”なのである。