孫子の兵法(44~45/虚実編)

「孫氏の兵法」から学べること。

目次

44)虚実編/相手の状況を把握することで勝利できる

原文

以吾度之、越人之兵雖多、亦奚益於勝敗哉、故曰、勝可爲也。敵雖衆、可使無闘、故策之而知得失之計、作之而知動靜之理、形之而知死生之地、角之而知有餘不足之處

書き下し分

吾れを以て之を度(はか)るに、越人(えつひと)の兵は多しと雖(いえど)も、亦(また)奚(なん)ぞ勝敗に益あらん。
故に曰く、勝は為すべきなり。敵衆(おお)しと雖(いえど)も、闘い無からしむべし、と。
故に之を策(はか)りて得失の計を知り、これを作(おこ)して動静の理を知り、これを形(あらわ)して死生の地を知り、之に角(ふ)れて有余不足の処(ところ)を知る。

越の国の兵がたとえ多くとも、それが必ずしも勝敗を左右するわけではない。

勝利とは、積極的に作り出していくべきものである。

敵が多くとも、それを分散させ、戦えないようにすればよいのである。

そのために、敵の状況をよく把握し、こちらとの利害得失をよく計算して作戦を練り、そのうえで敵を挑発して動くよう仕向けることでその行動の特徴・陣形・態勢を把握し、負けない戦場と負ける戦場を知り、小規模な衝突を仕掛けてみることで、敵にとって余裕のある箇所や不足のある箇所を知るのである。

45)虚実編/理想は無形

原文

故形兵之極、至於無形、無形、則深間不能窺、智者不能謀、因形而錯勝於衆、衆不能知、人皆知我所以勝之形、而莫知吾所以制勝之形、故其戰勝不復、而應形於無窮

書き下し分

故に兵を形(あらわ)すの極(きょく)は、無形に至る。
無形なれば、則ち深間も窺うこと能わず、智者も謀ること能わず。
形に因りて勝を衆に錯(お)くも、衆知ること能わず。
人皆我が勝の所以の形を知るも、吾が勝を制する所以の形を知ること莫し。
故に其の戦い勝つや復びせずして、形に無窮に応ず。

陣形の理想の極地は、無形、つまり、見た目の形をなくすことである。

無形であれば、こちらに潜り込んでいるスパイでもその作戦を探ることができず、敵側の智謀に優れたものでもこちらの陣形を読むことはできない。
そのうえで、敵の陣形のほうがが分かれば、その形に応じ、敵が多数であっても勝利を得ることになるのだが、他者にはその理由は分からない。

他者は、こちらが勝った形を知ることはできるが、いかにしてその形に持っていったかについては分からないのである。

こうして、その勝った形というのは再現できることはなく、敵の状況により、千変万化に変わっていくのである。

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