「孫氏の兵法」から学べること。
51)軍争編/敵味方の”耳目”を用いる
軍政曰、言不相聞、故爲金鼓、視不相見、故爲旌旗、夫金鼓旌旗者、所以一人之耳目也、人既專一、則勇者不得獨進、怯者不得獨退、此用衆之法也。故夜戰多火鼓、晝戰多旌旗、所以變人之耳目也、故三軍可奪氣、將軍可奪心
軍政に曰く、「言うとも相聞きこえず、故に金鼓を為(つく)る。視すとも相見えず、故に旌旗を為(つく)る」と。
夫れ金鼓・旌旗なる者は、人の耳目を一にする所以なり。
人既に専一なれば、則ち勇者も独り進むを得ず。怯者も独り退くを得ず。
此れ衆を用うるの法なり。
故に夜戦に火鼓多く、昼戦に旌旗多きは、人の耳目を変うる所以なり。故に三軍には気を奪うべく、将軍は心を奪うべし。
古い兵法書には、「戦場では口で命令しても聞こえないので鐘や太鼓を用い、また手で指示しても遠くまで見えないので旗や幟(のぼり)を用いる」とある。
鐘・太鼓・旗・幟は、兵の耳目を統一するためのものなのである。
軍隊の動きが統一されていれば、勇敢な者であっても勝手に進むことができず、臆病な者であっても勝手に退くことはできない。これが大部隊を指揮する方法である。
こうすれば、夜の戦いには火・太鼓を多く用い、昼の戦いには旗・幟を多く用いることで、敵の耳目を撹乱することもでき、敵軍の士気を下げ、敵の将軍の心をかき乱すことができる。
52)軍争編/士気をコントロールする
是故朝氣鋭、晝氣惰、暮氣歸、故善用兵者、避其鋭氣、擊其惰歸、此治氣者也
是の故に朝の気は鋭、昼の気は惰、暮れの気は帰。
故に善く兵を用うる者は、其の鋭気を避けて、其の惰帰を撃つ。
此れ気を治むる者なり。
兵士たちは、朝の気は鋭く、昼の気は緩く、夕暮れの気は萎んでしまう。
なので、戦いをうまく運ぶ者は、朝の気の鋭いときを避け、気の緩んだときや萎んだときに攻撃するようにしている。
これが”戦場で士気をうまくコントロールする”ということなのである。