「孫氏の兵法」から学べること。
60)行軍編/山地
孫子曰、凡處軍、相敵、絶山依谷、視生處高、戰隆無登、此處山之軍也
孫子曰く、凡そ軍を処(お)き敵を相(み)るに、山を絶つには谷に依り、生を視て高きに処り、隆きに戦いて登ること無かれ。
此れ山に処るの軍なり。
自軍の駐留と敵情の判断について。
山地における軍の原則。
山地を行くときには、水や飼料となる草のある谷に沿って進み、見通しのよい高地を見つけて軍を駐留っせる。
敵が高地にいるときには、こちらから山を登る形勢で戦ってはならない。
61)行軍編/河川地
絶水必遠水、客絶水而來、勿迎之於水内、令半濟而擊之利、欲戰者、無附於水而迎客、視生處高、無迎水流、此處水上之軍也
水を絶てば必ず水に遠ざかる。
客、水を絶ちて来たらば、これを水の内に迎うること勿(な)く、半ば済(わた)らしめてこれを撃つは利なり。
戦わんと欲する者は、水に附(つ)きて客を迎うること無かれ。
生を視て高きに処り、水流を迎うること無かれ。
此れ水上に処るの軍なり。
河川地における軍の原則。
渡河したら、展開しやすいよう必ず川から遠ざかる。
敵が渡河してきた場合、川の中で迎え撃ってはならない。敵の半数が渡り終わったというときに攻撃を開始すると有利に運ぶことができる。
戦うときは、川近くに陣を構えて迎え撃ってはならない。見通しのよい高い場所に陣を構えるようにし、決して下流から上流に向かって敵を攻撃してはならない。
62)行軍編/沼沢地・湿地帯
絶斥澤、惟亟去無留、若交軍於斥澤之中、必依水草而背衆樹、此處斥澤之軍也
斥沢(せきたく)を絶つには、惟だ亟(すみや)かに去りて留まること無かれ。
若し軍を斥沢の中に交(まじ)うれば、必ず水草に依りて衆樹を背にせよ。
此れ斥沢に処るの軍なり。
沼沢地・湿地帯における軍の原則。
沼沢地・湿地帯を通るときは、なるべく速く通り過ぎるようにし、駐留してはならない。
もしも沼沢地・湿地帯で敵と交戦せざるを得ないときは、必ず水や飼料となる草のある場所に軍を配置し、多くの樹木のあるところを背にすべきである。
63)行軍編/平地
平陸處易、而右背高、前死後生、此處平陸之軍也、凡此四軍之利、黄帝之所以勝四帝也
平陸には易(い)に処りて、高きを右背にし、死を前にして生を後ろにせよ。
此れ平陸に処るの軍なり。
凡(およ)そ此の四軍の利は、黄帝の四帝に勝ちし所以なり。
平地における軍の原則。
平地では、行動しやすい場所に軍を駐留させるようにし、高地を右後方にする(左前方を低地とする)。
こうして敵の死を前方とし、味方の生を後背地とする。
4つの原則(山地、河川地、沼沢地、平地)を駆使したことにより、黄帝は、4人の王に勝ったのである。