損益計算書が一目瞭然であるのに対し、貸借対照表は見方が難しいものですが、”何のバランスの表なのか”が分かると、見方がイメージできるようになりそうです。
作間信司「一倉定の社長学」(プレジデント社)を参考として。
バランスシートは何のバランスなのか
決算書といえば、「貸借対照表」と「損益計算書」で構成されています。
うち、「損益計算書」は、その意味が一目瞭然で分かりやすくできています。
一番上の”売上高”から、様々な経費が差し引かれていくという作りになっているからです。
もちろん、キャッシュという視点から見た場合には、税引後利益からさらに減価償却費を足し戻し、借入元本返済などを加味しなければ良し悪しは分からないものの、少なくとも税引後利益までの数字は上から下に流れているので分かりやすく感じます。
一方、「貸借対照表」は、その意味をよく見なければ、良し悪しが見えてきません。
またの名を「バランスシート」といいますが、作間信司「一倉定の社長学」(プレジデント社)を読んで、”目から鱗”と感じたことがあります。
それは、
”バランスシートとは、何と何のバランスなのか?”
ということを考えてみる、ということです。
源泉と使途のバランス
バランスシートとは、「源泉」と「使途」のバランスである、という見方です。
バランスシートの右側には、仕入債務、借入金、資本金、過去の利益の累積などがリストアップされています。
これらは、会社の資産をどのように調達しているか、会社の資産の「源泉」を示しています。
一方で、バランスシートの左側には、現預金、売掛債権、固定資産などがリストアップされています。
これらは、調達した資産の「使途」を示しています。
会社の資産の「源泉」が何であるか?
その会社の資産の「使途」は何であるか?
というものです。
さらにもっとイメージしてみるに、1年先に、どうなっていたいかを実際に考えてみると、より身近に感じられるようになります。
1年先に、どの「源泉」の項目から資産を調達し、どの「使途」を増加させたいのか。
それを具体的にイメージすればするほど、貸借対照表が身近になってきます。
固定資金と運転資金のバランス
バランスシートとは、「固定資金」と「運転資金」のバランスである、という見方です。
事業を行ううえで、入金の項目・度合いが固定されているものがあります。
また、支払いの項目・度合いが固定されているものがあります。
例えば、今期に新規借入れをするかどうかで、借入金の増加額は確定され、固定されます。利益に関しても、計画を立てることで、ある程度の目標値としてですが利益も固定されてきます。
また、前期利益が固まっていれば、支払うべき税額は固定されていますし、借入金の返済額も固定されています。
ほぼ唯一、検討の余地がある項目は、「設備投資をすべきかどうか」です。
上記の「固定資金」の項目が固まってくると、「運転資金」へどれだけ資金を回せるかが見えてきます。
換言すると、「固定資金」の項目をしっかり固めたうえでないと、「運転資金」の余裕度合いは見えてこないともいえます。
つまり、「固定資金」と「運転資金」を一緒くたに考えてしまうと、自社の資金の余裕度合いは見えてきません。
上記のように考えてみると、損益計算書の予測をして「利益」のシミュレーションができていれば、さらに資金繰りを考えるうえで、ほとんどの項目は固定されることに気づかされます。
そして、唯一、意思決定の余地があるのは「設備投資(固定資産へどれくらい投資するか)」である、という点に集約されてきます。
これについては、経営判断として、当然、運転資金への影響度合いを加味して決める必要がありますが、
究極的には、
「手元資金の温存を優先するべきなのか、将来へ投資し競争力の維持発展を優先すべきなのか」
ということに帰結してきます。