「Claude Code」を全社導入しました

酒井寛志税理士事務所および株式会社アンジェラス通り会計事務所のグループ全社として、AIを活用した業務効率化と新たな価値創出を目指して、2026年8月6日付けでAnthropicのAI「Claude」TeamPlanを導入しました。

2024年12月「Gemini for Google Workspace」全社導入に続く、2本目の基幹AIです。

目次

なぜ「Claude(Claude Code)」なのか

すでにGeminiを全社導入しているのに、なぜもう1本AIを増やすのか。

その答えは、AIの使い方そのものが”次の段階”に入ったと感じたためです。

「チャットAIに聞く時代」から、「エージェントAIへ作業を任せる時代」へ

これまでのAI活用は、チャット画面に質問を投げて答えをもらう、いわば”相談相手”としての使い方が中心でした。

一方、Claude Code(クロード・コード)は、指示を受けて自分でファイルを読み、資料を作り、作業を完結させてくれる”エージェント型AI”です。

エージェント型とは、一問一答ではなく、目的を伝えると複数の工程を自律的に進めてくれるAIのことです。

「相談する」から「任せる」へ。

この変化は、質問の仕方の変化ではなく、仕事の組み方の変化だと感じています。

Geminiとの役割分担

Geminiは不要になったのかというと、そうではありません。

GoogleWorkspaceとシームレスにつながる日常業務・データ整理はGemini。

複数工程をまたぐ作業・資料作成・業務の自動化はClaude。

用途に応じて最適なAIを選び取るようにしています。

まず経営者自身が5ヶ月使い倒してみた

全社導入の前に、まず経営者である自分自身が約5ヶ月、日常的に使い込みました。

スタッフに”よく分からないけどいいらしいから使ってみて”などと渡す前に、自分で知っておきたかったからです。

実際に使ってみた

5ヶ月で定着した使い方の一部をご紹介します。

  • 証憑のデータ化・整理
    レシートや請求書の画像・PDFから日付・金額・支払先を読み取り、会計ソフト取込用のデータや整理されたファイル名に変換
  • 帳簿・申告書チェックの補助
    確認事項や不明点の洗い出しをサポート
  • 月次報告書・打合せ資料のたたき台作成
    事務所のデザインルールに沿った資料の下書きを生成
  • 書類まわりのPDF作業
    結合・ページ抽出・編集・画像からの変換など、地味に時間を取られる作業
  • 日常の定型作業
    源泉所得税の納期特例の集計や、特別徴収税額通知書の展開など
  • 情報収集
    補助金情報の定期的な情報収集・ピックアップとレポート化
  • 情報発信・提案資料の作成
    提案スライド、制度紹介スライド、お客様向け配信文の下書き

共通しているのは、”ゼロから人間がやると重いが、AIのたたき台があると一気に進む”仕事だということ。

研修と試行錯誤で見えたこと

独学だけでなく、外部研修も受講しながら進めました。

そこで実感したのは、エージェント型AIの場合は、”良い指示”よりも”良い環境”で性能が決まるということです。

どのフォルダに何があるか。
どんなルールで作業してほしいか。
何をして欲しくて、何をしてはダメなのか。

これらを、”仕組み・設定”で整備しておくこと。

これらをあらかじめ整えておくことで、同じ指示でも成果物の質は大きく変わることが分かりました。

新入社員を迎えるときの、マニュアルと職場環境を整えるのと同じ感覚といえそうです。

5ヶ月で積み上がった「事務所の資産」—スキル98個—

使い込むなかで、単なる操作の慣れ以上のものが手元に残りました。

その中心が「スキル(Skills)」です。

数えてみたら、5ヶ月で98個(2026年8月時点)。

スキルとは—AIに渡す業務マニュアル—

Claudeには、業務の手順・ルール・注意点をまとめた指示書を「スキル」として登録し、繰り返し呼び出せる仕組みがあります。

イメージとしては、新しく入ったスタッフに渡す業務マニュアル。

「この業務は、この手順で、ここに気をつけて、この形式で仕上げてね」という内容を、AIが読める形で書いておくものです。

一度スキルにしておけば、次からは「あの業務お願い」の一言で、毎回同じ品質の仕事が返ってきます。

その場その場で長い指示文を書く使い方との、最大の違いがここにあります。

98個のスキルの全体像—12のカテゴリー—

98個の内訳を分類すると、次の12カテゴリーになりました。

カテゴリー代表的なスキルの例
経理・記帳の自動化18・freeeへの自動登録処理
・通帳・クレカ明細のCSV化
・証憑データのリネーム、リストCSV化
・自動登録ルールの整備
・freee取引先タグの整備
決算・税務申告13・税務申告書チェック
・決算書等の整合性チェック
・源泉所得税の納期特例集計
・税務申告書PDFファイルまとめ
AI運用・メンテナンス12・スキル群の監査
・セキュリティ設定の点検
・機密フォルダの保護
・スキルを作るためのスキル
月次チェック・報告15・freee帳簿チェック
・月次報告書作成
・お客様との共有資料フォルダの自動作成、自動格納
・業種特化の分析表更新
情報発信・デザイン8・情報発信文作成
・事務所デザインのスライド作成
・提案書スライド作成
・制度説明スライド作成
・発信内容のレビュー
事務所運営・人材育成8・スタッフオンボーディング
・手順書作成
・業務の棚卸し
・面談議事録の整理
・日報チェック
書類・PDF処理6・PDFの編集・ページ抽出・テキスト抽出
・画像(JPG、PNG、HEIC)からPDFへのファイル形式変換
情報収集・リサーチ5・補助金検索
・統計データの数値抽出
・Webサイトの情報取得
・ナレッジベース検索
顧客管理・営業5・関与先名簿の作成
・お客様リストの更新
・リード管理
・名刺ファイルの整理
請求・売上業務4・売上請求書の発行→クライアントフォルダ格納→連絡→freee売上計上→入金確認補助
思考・壁打ち4・計画や判断をあえて質問攻めで詰めてもらう壁打ち用スキルなど

こうして並べると、経理・税務の本業まわりだけで45個。

一方で、Claude Codeの運用管理・事務所運営・思考の壁打ちといった”仕事のインフラ”側にも半分近くが割かれています。

華やかな仕事よりも、日々の地味な実務と足場づくり。

しかしながら、事務所の生産性を実際に左右しているのは、まさにこの部分なのではないかとは思います。

スキル化して分かった3つのこと

98個作るなかで、想定していなかった発見がいくつもありました。

1つ目は、スキルを書くと業務フローが見える化されること。

たとえば請求書業務は、「発行→クライアントフォルダ振分け→連絡→売上計上→入金確認」と工程ごとに分割して4本のスキルにしました。
あるいはこれらのスキルが相互に連携して動くようにもしました。

AIに任せられる形に手順を言語化しようとすると、「この工程は誰が何を判断しているのか」「次の工程への受け渡しは何か」を明確にすることになります。

結果として、頭の中や個人のやり方に留まっていたノウハウが形式知になり、業務の棚卸しと標準化が同時に進みました。

2つ目は、”たまにしかやらない業務”こそスキル化が効くこと。

源泉所得税の納期特例の集計や、特別徴収税額通知書の展開・内容確認・リネーム・格納のような、年1〜2回しか発生しない業務があります。

毎日の業務は体が覚えていますが、時期物は「前回どうやったっけ」と思い出すところから始まりがちです。

手順をスキルにしておけば、その思い出すコストがゼロになる。

半年後の自分への引き継ぎ書を書いている感覚に近いかもしれません。

3つ目は、スキル自体もAIと一緒に作り、AIに点検させられること。

スキルの文章はゼロから手書きしているわけではなく、「この業務をスキル化したい」と伝えて、AIと対話しながら作っています。

先行者の方が公開されているチェックの観点を取り入れて、スキルの形に落とし込んだものもあります。

さらに98個まで増えてくると、スキル同士の重複や古くなったルールも出てきます。

そこで、スキル群全体を監査するスキル、セキュリティ設定を点検するスキル、スキルを作るためのスキルといった、”AIの運用を管理するためのスキル”が12個。

AIの仕事ぶりをAIに点検させる。

少し不思議な構図ですが、スキルが資産として増えていく組織では、こうしたメンテナンスの仕組みが必須になっていくと感じています。

守りの設計—ガードレールと情報の線引き—

一方で、任せるからこそのリスクにも向き合いました。

エージェント型AIは、ファイルの作成だけでなく削除もできてしまいます。

そこで、大切なファイルを誤って消さないための”ガードレール”(AIの行動に制限をかける安全ルール)をかなり入念に設計しました(あの手この手で6重ガードレール)。

削除系の操作はAIに実行させない。どうしても削除したそうにするときのためのフォルダ(削除前確認フォルダ)を作成しておく。

freee会計データへの閲覧・書込みには、実行前に必ず人間の承認を取る。

税務・会計上の判断はAIにさせず、確認事項として人間に戻す。

また、お客様の情報をどこまでAIに扱わせるのかというテーマには、さまざまな考え方があるところです。

当グループでも、AIが扱う情報の範囲・アクセスできるフォルダの線引き・作業のルールを慎重に設計しながら、段階的に運用しています。

機密性の高い情報をAIの作業対象から切り分ける仕組みも、スキルの1つとして用意しました。

攻めの活用と守りの設計はセット。

これが5ヶ月で得た、最も重要な学びの1つかもしれません。

全社展開の導入想定

こうした実践を踏まえて、全社展開を進めることにしました。

どの業務から任せるか

Gemini導入時と同じく、いきなり難しい仕事を任せるのではなく、汎用的な業務からの適用が基本方針です。

最初の一歩に向いているのは、次のような業務と考えています。

  • 手順が決まっている定型作業(データ化・リネーム・整形)
  • たたき台があると助かる資料作成
  • 時間はかかるが判断は要らないPDF作業や情報収集

逆に、税務判断・お客様とのコミュニケーション・Claude Codeの生成物のチェックは、引き続き人間の仕事です。

みんなに無理なく展開

正社員だけでなくパートスタッフへももれなく展開。

パートスタッフへも「AIスキル開発手当」を支給、賞与や昇給の仕組みにおいて生産性の高さを評価軸とすることを公表することで、積極的に取り組むためのインセンティブを設けるようにしています。

初めて取り組むスタッフにおいても、最初は具体的な業務を指定し、実際に使ってもらうなかで、次のステップを想定しています。

  1. まずは既存のスキルを”使う側”として体験する
  2. 慣れてきたら、自分の業務の小さな手順を1つスキル化してみる
  3. うまくいった事例をみんなでシェアし、生産性が上がったことを喜び合う
  4. よりお客様に目を向け、よりお客様が求めていることに応えていく

ゼロから自分で試行錯誤する必要はなく、98個のスキルという型の上からスタートできます。

これが、先に経営者自身が使い込んだことの最大の意味だと考えています。

設定キットもClaude Code自身に作らせる

展開用の”設定キット”の準備も、Claude Codeと相談して作りました。

私自身が各種研修や情報から組み上げてきたものをもとに、フォルダ構成・基本ルール・最初に入れるスキル一式をまとめたセットアップキットを、Claude Code自身に作ってもらいました。

AIの導入準備をAIに任せる。

少し不思議な光景ですが、エージェント型AIらしい活用の1つといえそうです。

どこに着地させていくのか

最後に、Gemini導入時にも書いた”着地点”の話です。

人間は入口と出口へ

定型的な作業・資料作成・情報収集の中間工程はAIがリードし、人間は”入口”と”出口”に注力する。

入口とは、何をどう捉えてどのように依頼するか。そのために何を整えるべきなのか。

出口とは、成果物の確認(必ず人間がチェックし、判断する。)。お客様への価値の届け方。

この配置は、Gemini導入時に描いたフォーメーションのまま、エージェント型AIによってさらに現実味を増してきたと感じています。

全社で使うからこそ

Teamプランでの全社導入により、スキルや事例をチームで共有しながらより安全な形で育てていける環境が整いました。

同時に、ガードレールや情報の線引きといった安全ルールも、個人の心がけではなく組織の仕組みとして運用していきます。

AIを単なるツールではなく、事務所の新しいメンバーとして迎え入れる。

そして、この試行錯誤のノウハウを、そのままお客様のAI活用支援にもつなげていく。

数年後に振り返ったとき、この導入が事務所の働き方の転換点だったと言えるように、じわじわ、でも確実に育てていければと考えています。

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この記事を書いた人

長崎で活動する
税理士、キャッシュフローコーチ

酒井寛志税理士事務所/税理士
㈱アンジェラス通り会計事務所/代表取締役

Gemini・ChatGPT・Claudeなど
×GoogleWorkspace×クラウド会計ソフトfreeeの活用法を研究する一方、
税務・資金繰り・マーケティングから
ガジェット・おすすめイベントまで、
税理士の視点で幅広く情報発信中

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