SWOT分析やPEST分析という名前は知っていても、実際に使いこなすとなると情報を集めて型に当てはめる作業に手間取り、途中で止めてしまうことは少なくありません。生成AIにこうした経営分析のフレームワークを組み合わせると、この最初のハードルがぐっと下がります。フレームワークという「型」があるからこそ、生成AIも迷わず情報を整理できるのです。
池田朋弘『Claude 最強のAI自動化術』(芸術新聞社)を参考にして。
生成AIとフレームワークを組み合わせると、なぜ精度が上がるのか
生成AIに「うちの会社の戦略を考えて」とだけ頼むと、それらしい言葉が並ぶものの、一般論で終わってしまうことがあります。
原因は、生成AI自身の力不足というより、こちらの依頼のしかたにあることが多いように感じます。
なんとなく丸投げしてしまうと、AIも人と同じように、考える目的や深さや範囲が定まらないまま出力してしまうのです。
生成AIと「ビジネスフレームワーク」を組み合わせる方法を知っておくと、本格的な戦略策定への一歩を、これまでより軽い足取りで踏み出せるように思います。
生成AIが持て余しがちな「情報の整理」を型が肩代わりする
経営戦略を考えるとき、外部環境と内部環境、両方の情報を漏れなく拾う必要があります。
市場の動き、競合の状況、自社の強みと弱み。
これらをゼロから書き出していく作業は、人間にとってもAIにとっても、なかなか骨が折れる部分です。
ここで、SWOT分析やPEST分析のようなフレームワークを使うと、「見るべき観点」があらかじめ決まります。
生成AIに対しても、「このフレームワークの4つの観点で整理して」と伝えるだけで、検討すべき要素を漏れなく重複なく引き出しやすくなります。
フレームワークは、生成AIも使い方を学習済みである
SWOT分析や3C分析、4P分析といった経営分析のフレームワークは、世界中のビジネス書やWeb記事で繰り返し解説されてきました。
そのため生成AIは、フレームワークの定義だけでなく、実際の使われ方や典型的な活用例まで、すでに広く学習しています。
「PEST分析をして」と伝えれば、政治・経済・社会・技術という4つの視点で情報を整理し、機会と脅威に振り分けるところまで、迷いなく実行してくれます。
これまでは、戦略コンサルティング会社に入って実務を重ねる中で身につけていくような使い方が、生成AIを介せば誰でも一定水準で再現できるようになってきているのです。

生成AIと組み合わせて使えるフレームワーク
経営分析のフレームワークの理論を深く掘り下げるより、「どんな場面で、生成AIに何をさせるための型か」をもとに整理して知っておくとよさそうです。
環境を洗い出す型
自社を取り巻く状況を、外側と内側の両面から棚卸しするための型です。
| フレームワーク | 一言で言うと | 生成AIに向いている作業 |
|---|---|---|
| PEST分析 | 政治・経済・社会・技術の4視点で外部環境を整理する型 | 業界の動向や制度変化を検索し、機会と脅威に仕分ける |
| 3C分析 | 市場・顧客、自社、競合の3方向から状況を把握する型 | 業界内の一般的な競合構造や顧客動向を整理する |
| VRIO分析 | 自社の経営資源が本当に強みと言えるかを4条件で吟味する型 | 挙がった強みの候補を、条件に沿って一つずつ検証する |
| 経営資源の棚卸し | 自社の強み・弱みを、人材や技術などの資源単位で洗い出す実務ツール | ヒアリング結果を、強み・弱みのどちらに当たるか整理し直す |
戦略に落とし込む型
洗い出した情報を、具体的な打ち手に変換するための型です。
| フレームワーク | 一言で言うと | 生成AIに向いている作業 |
|---|---|---|
| SWOT分析 | 強み・弱み・機会・脅威の4要素に情報を整理する型 | 外部環境分析と内部環境分析の結果を、4つの箱に仕分ける |
| クロスSWOT分析 | SWOTの4要素を掛け合わせ、具体的な戦略の選択肢を導く型 | 掛け合わせのパターンごとに、戦略案と実行ステップの叩き台を作る |
| バランスト・スコアカード | 財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4視点で戦略を目標に落とす型 | 各視点に対応するKPIや具体的な施策の候補を挙げる |
マーケティングの型
商品やサービスをどう届けるかを考えるための型です。
| フレームワーク | 一言で言うと | 生成AIに向いている作業 |
|---|---|---|
| 4P分析 | 製品・価格・流通・販促の4視点で提供価値を整理する型 | 4つの視点ごとに、現状の整理と改善案のたたき台を作る |
| バリューチェーン分析 | 事業活動を工程ごとに分解し、価値の生まれ方を見る型 | 主活動と支援活動を分解し、どこに強み・弱みがあるか仮説を立てる |
| AIDMA | 注意・関心・欲求・記憶・行動という購買心理の流れを表す型 | 各段階で顧客がどう感じ、何を見ているかの仮説を段階ごとに書き出す |
規模・数字を測る型
まだ手元にないデータを、論理的に見積もるための型です。
| フレームワーク | 一言で言うと | 生成AIに向いている作業 |
|---|---|---|
| フェルミ推定 | 実データがない前提で、仮定を積み上げておおよその数値を出す型 | 前提条件を分解し、計算過程ごと数値を組み立てる |
| TAM・SAM・SOM | 理論上の市場規模、対応可能な市場、現実的に獲得できる市場を段階的に見る型 | 業界の公開情報から、3段階それぞれの規模感を試算する |

フレームワークを生成AIに使わせるときに気をつけたいこと
型を渡すことで生成AIの出力は格段に上がりますが、そのまま鵜呑みにしてよいわけでもありません。
型に頼れるのは「外部の一般論」まで
PEST分析のように、公開されている業界動向や制度の話を扱う場面では、生成AIは強みを発揮します。
一方で、経営資源の棚卸しのように、その会社固有の強み・弱みを扱う場面になると、上場企業やよほど知名度の高い会社でない限り分析対象の内部事情までは学習していません。
この部分は、人への綿密なヒアリングという、人にしかできない工程をしっかりと挟む必要があります。
出てきた叩き台を、最後に整えるのは人
フレームワークに沿って生成AIが出した戦略案は、あくまで叩き台です。
難易度や必要予算、実行ステップまで具体的に書いてくれることも多いですが、その会社が置かれた本当の事情、経営者の価値観まではきちんと織り込まれていないのです。
どの戦略を選び、どこまで実行するかを決めるのは、最終的には経営者自身であって、また、それに寄り添う立場の人間のみなのです。
型を使いこなすほど、ゼロから叩き台を作る手間は減っていきますが、選び取る判断の重みは変わらないように感じています。

