銀行の融資審査を知るには、債務者区分・信用格付を知っておく必要があります。銀行はそれをもとに取引方針を決めているからです。
川北英貴著「銀行からの融資完全マニュアル」(すばる舎)を参考として。
銀行の取引方針を知っておく
自社の取引銀行が、自社に対してどのような取引方針を持っているか知っておくと、資金調達計画のメドを早め早めにつけていくことができます。
どのような取引方針を取っているかは銀行によってまちまちで、ある銀行は消極的でも、ある銀行は積極的な場合もありえます。
そのため、早めに知っておくことで、確実な資金調達を行うことができますし、どの銀行も消極的なのであれば、早めにリスケ(融資条件緩和)の交渉をしていく腹づもりをすることができます。
債務者区分→信用格付→取引方針
債務者区分・信用格付・取引方針の関係性について、川北英貴著「銀行からの融資完全マニュアル」(すばる舎)では次のように解説されています。
債務者区分 | 信用格付 | 取引方針 |
---|---|---|
正常先 | 1格・2格 3格・4格 5格・6格 | ①積極推進方針 ②推進方針 ③現状維持方針 |
要注意先 | 7格 8格 | ③現状維持方針 ④消極方針 |
要注意先のうち要管理先 | 9格 | ⑤取引解消方針 |
破綻懸念先 | 10格 | ⑤取引解消方針 |
実質破綻先 | 11格 | ⑤取引解消方針 |
破綻先 | 12格 | ⑤取引解消方針 |
①積極推進方針
積極的に融資していこうという方針です。
積極的であるため、プロパー融資・より多額で長期間の融資・低金利の融資・保証人不要の融資なども行っていきます。
②推進方針
①ほどではないものの融資を推進していくという方針です。
この場合、競合との競争があったとしても、そこでより好条件を出していくほどではないといわれています。
③現状維持方針
融資残高が減らない程度で融資を推進していく方針です。
④消極方針
新たな融資は行わない・少額融資のみ行う、という方針です。
この方針が取られる企業の特徴としては、経常赤字であったり債務超過であったりするといわれています。
そのため、融資される側としては、経営改善計画書を提出しつつ改善努力をしていく姿勢を見せたほうがよいといわれています。
⑤取引解消方針
現行融資の返済が求められるようになるといわれています。
保有不動産等の売却を求められたり、少しでも売上が上がると返済に回るよう求められるようになります。
この方針が取られる企業の特徴としては、すでにリスケ(返済の減額・猶予)が行われているといわれています。
銀行の取引方針を知るには
銀行の取引方針は、融資先企業に公表されることはありません。
では、自社の取引銀行が、自社に対してどのような取引方針を持っているか、どうすれば知ることができるか。
折り返しでの融資申請において、それを最も知ることがことができます。
完済が近くなって折り返し融資を申請する際に、その銀行に対してこれまで借りていた最高残高に達するまでの金額を借りることができるかどうか。
これまでの最高残高を超える金額を申請しても通るようであれば、積極推進方針または推進方針である可能性が高いといえます。
最高残高までであれば、現状維持方針である可能性が高いといえます。
一方で、これまでの最高残高に達せず、これまでより少なく・より返済期間が短く・より金利が高くなるような決定がなされるのであれば、消極方針である可能性が高いといえます。
審査がまったく下りないという場合、取引解消方針である可能性が高いといえます。