決算書、試算表を作るには、様々なお金の流れに関する情報を集約していくことから、どうしても煩雑に感じがちですが、そもそもなぜ決算書、試算表は必要なのか。
松波竜太編著・監修、資金調達相談士協会著「中小企業の財務改善ノウハウ」(第一法規)を参考にして。
決算書、試算表を作るには負担もかかる
事業をしていると必ず”決算書、試算表を作る”ということと向き合うことになります。
事業の一部ではあるのですが、業種によっては、日頃行っている業務との性質の違いから、なかなか向き合うことが難しい場合もあります。
事業として行う業務を「緊急度」・「重要度」で分けるとすると、日頃行っている業務のほうが緊急度・重要度ともに高いものです。
決算書・試算表の作成業務というのは、重要度は高いものの、一定の期限が来るまでは緊急度が低い場合が多く、これも向き合うことを難しくしている原因かもしれません。
また、直感的というよりも論理的な側面が強いことから、とっつきづらさも感じさせます。
一方で、重要度は非常に高く、これをおろそかにしたばかりに、税金の資金確保がうまくいかない・銀行から融資を受けられない・現状のお金の状態が見えず思い切った事業投資判断ができないなど、事業の継続性や成長性に大きな影響を与えるものでもあります。
決算書、試算表を作る目的
決算書、試算表は、なぜ作らなくてはいけないのか。その目的について、松波竜太編著・監修、資金調達相談士協会著「中小企業の財務改善ノウハウ」(第一法規)での言語化はとても参考になります。
- 現状を把握するため
- 確信をもって経営の意思決定をするため
- 資金調達するため
現状を把握するため
事業は”思い”だけではできないものです。お金がかかるものですし、そのためにお金をいただく行為でもあります。
お金が回らなければ、事業を継続していくことができません。
逆にいえば、お金が回れば、事業をずっと継続していくことができます。
事業のお金の状態の現状を把握するために、決算書・試算表を作る意義があります。
確信をもって経営の意思決定をするため
事業に対してしっかりとした投資をしなければ、しっかりとしたリターンを得ることができません。
商品・サービスの品質・安全性を確保するための設備・人への投資、そして、その見せ方(ラベル、広告、店舗、チラシ、HPなど)への投資などがしっかりとしたものでなければ、消費者から選ばれる確率はどんどん狭まっていきます。
ただ、事業に対する投資というものは金額が大きくなりがちですし、決断や責任を求められるものなので、どうしても先送りしてしまいたくなります。
今の事業のお金の状態を明確にしたり、その投資によってどれくらいのリターンがあればよいかが明確になり、将来どのようになるかが明確であれば、その決断をすることができます。
大企業は多く失敗をしても資金的な体力はありますが、中小企業は早々失敗を繰り返すわけにもいきません。
確信をもって正確な意思決定をするために、決算書・試算表を作る意義があります。
資金調達するため
手元に資金がなければ、投資どころか日頃のあらゆる営業をすることができません。
手元に資金が少なければ、リターンの見込める投資判断をすることもできませんし、日頃の経費に対してすら判断が縮こまってしまい、事業が縮小均衡へと向かってしまうばかりです。
となると、中小企業にとっては、「銀行から資金を借りる」ということが有力な選択肢になります(唯一といってもよいかもしれないくらいに)。
しかし、銀行は慈善事業ではないため、返してくれると見込める会社に対してしか貸したくないのが心情です。
ということは、自身の事業で利益が出ていること・利益が出る見込みがあることを、銀行に対して客観的に示す必要があります。
資金調達するために(いつでも資金調達できるようにするために)、決算書・試算表を作る意義があります。