金融機関の融資タイプ(融資商品)にはどのようなものがあるか。
松波竜太編著・監修、資金調達相談士協会著「中小企業の財務改善ノウハウ」(第一法規)を参考にして。
目次
融資タイプ(融資商品)を知っておく
融資タイプ(融資商品)を知っておくことで、銀行との話もスムーズに進めることができますし、銀行が何を意図して勧めてくれているのかも理解できるようになります。
融資タイプ(融資商品)いろいろ
保証協会保証付き融資
- 信用保証協会の保証が付いた融資
- 無担保、無保証で受けやすくなる
- 信用力が低い場合でも融資を受けやすい
- ”保証割合:保証協会80%+金融機関20%”が基本(責任共有制度)
※創業関連保証、セーフティネット保証などが例外としてある - 銀行金利+保証協会保証料
- 保証協会による保証額には限度あり(個別の会社の財務状況によって決まる)
プロパー融資
- 保証協会の保証がない、銀行の直接融資
- 信用力がある程度高い必要がある
- 銀行金利のみ
マル経融資
- 商工会議所が推薦した企業に対する日本政策金融公庫の融資
- 要件あり(商工会議所の6ヶ月以上の経営指導+事業改善、従業員数20人(商業サービス業5人)以下等
- 貸付限度額2,000万円
- 返済期間:運転資金7年、設備資金10年
制度融資・利子補給
- 自治体が産業振興のために設けている融資制度
- 金利も控えめ
- 固定金利
- 基本的に無担保、第三者保証人をつけない保証協会保証付き融資
- 自治体の審査があるため、融資までに時間・手間がかかる
- 利子補給(利子のキャッシュバック)がある自治体もある
- 保証協会による保証額には限度あり(個別の会社の財務状況によって決まる)
中小企業経営力強化資金
- 認定支援機関による指導・助言を受けている会社が対象の日本政策金融公庫の融資制度
- 既存事業者も創業事業者も利用可能
- 創業融資の場合でも自己資金要件なし
- 要件:認定支援機関の支援+事業計画策定+経過報告(支援機関に半年ごと、公庫に1年ごと)
- 運転資金、設備資金の両方に使うことができる
コベナンツ融資
- コベナンツ=契約条件
- 最近、増加傾向
- 主な契約条件:情報開示義務(財務状況を定期的に開示)、財務制限条項(2期連続経常赤字を避ける、純資産額が前年度の75%以上など)、資産処分制限義務(会社の資産の処分をする、大株主が変わる等は事前相談の必要あり)
→抵触した場合、借入条件悪化、即時返済など - 担保・保証がなくとも高額融資可能な場合あり
- 金利などの条件がよい場合あり
シンジケートローン
- 複数の金融機関がシンジケートを組んで共同で融資する制度
- アレンジャー(代表金融機関)が参加金融機関をまとめ、同じ条件・契約でもって1社へ融資
- 返済→決められた口座で一括で行う
- 関係者が多いため、契約書が長文・複雑になる(融資条件、前提条件、表明保証など)
- コベナンツ設定が基本
- アレンジメントフィー、エージェントフィーなど、通常融資よりコスト高
AI融資
- AIが融資審査を行う
- 過去の取引記録等から客観的に審査される
- ショッピングサイト(Amazon、楽天など)であれば、ECサイト等の取引データ、決済情報、口コミなどをベースに審査されることもある
- 入出金の推移、ネット販売の取引履歴、会計ソフトの入力データ等を分析し、返済能力を判断する
- 審査が早い(2~3日以内)
- 決算書・事業計画書などが不要
- オンライン手続きが中心
- 無担保、無保証もある
- 小口の短期返済もある
- まだ少額・高金利・短期日のものが多い
- 今後、急速に浸透していく可能性あり
- おさえるべきポイント:①入出金の管理を確実に行う、②ネットバンキングで記録の残る取引を行う、③会計ソフトでルールに則った適切な経理処理を行うなど