どのようにすれば、経営はよくなっていくのか。事業の継続に不可欠な”お金”の面を中心に。
松波竜太編著・監修、資金調達相談士協会著「中小企業の財務改善ノウハウ」(第一法規)を参考にして。
好循環
経営が好循環な状態とは、以下のようなループにあることだと考えられます。
- 利益を出す
- 利益をもとに、資金調達する(資金を借りる)
- 借りた資金で事業へ再投資する
- 投資することで競合との差別化を図り、売上を上げ/省力化し、さらに利益を出す
財務体質の改善の道筋①
まずはスモールスタートで始めて”利益の出るパターン”ができてくると、事業のどの部分に再投資すればより利益を生むかが見えてくるようになります。
地道に手元に資金を貯めてから再投資するというパターンもありますが、基本的に、売上が増えていく局面では、在庫・経費増加・売掛債権などの増大により、思ったほど手元には資金が貯まっていかないものです。
となると、これらの”利益から出る資金をまとめて前借りする”感覚で、銀行からの資金調達を考えることも有力な選択肢になります。
商機を逃さないためにも、この”時間を買う”という感覚は重要でもあります。
”利益が出る仕組み”を考えることはもちろんのこと、”銀行から資金調達をしやすくなる状況づくり”という視点も持っておきたいところです。
では、どのようなことをすれば、銀行から資金調達がしやすくなる状況になるのか。
- 必ず経営者自らが、月々の経営数字の確認を行う
- 試算表の作成頻度を上げる
- 売上目標・利益目標を具体的に考えて意識する
- 役員報酬の状況を把握し、確実な根拠のもとに決定していく
- 従業員の福利厚生・賞与の状況を把握し、確実な根拠のもとに決定していく
- 不良債権の償却を検討する
- 役員借入金を債権放棄する
- 増資する
- 保険を解約する
- 銀行との相性を見極めて、預金を整理する
- メインバンクに預金を集中する
- 新規取引銀行を開拓する
- 短期から長期借入に移行する
- 県外地銀を紹介してもらう
- プロパー融資に切り替えていく
- 帝国データバンクに登録する
- 手形割引をしないようにする
- 支払手形を長期借入金に転換していく
- 実質金利で金利交渉する
- 保証人、抵当権を整理する
- 銀行引受社債を発行する
- グループ会社を合併する
- 事業目的を見直す
財務体質の改善の道筋②
財務体質を改善するには、以下のような道筋を考えてみたいところです。
- 換金できる資産を換金し、手元資金に変える
- 上記の手元資金をもとに、利益を出し、銀行から長期で借入する
- 短期借入も少しずつ長期借入に転換していく
- 支払手形をやめ、長期借入金でやり繰りする(手形事故による破綻リスクを減らす)
- 手形割引をやめ、長期借入金でやり繰りする(手形事故による破綻リスクを減らす)
- 「手元資金月商3ヶ月分」を目安に、資金調達を維持する
資金調達は目的ではなく手段
銀行借入による資金調達を積極的に活用していくべきものだと思います。
ただし、どこまでいっても、それは目的ではなく手段でしかない点には注意しておきたいところです。
最初の段階でも、銀行借入するには「利益」が求められますし、銀行借入ができるようになっても「利益」が求められます。
あくまでも、核となることとは「事業において利益を出すこと」であることには変わらないものです。
正しい情報から正しい経営判断をしていく
では、どのように経営判断していけばよいのか。
どれほど有能な経営者でも、不足した情報・不正確な情報からでは、正しい経営判断をすることができません。
正しい情報を得たうえで、はじめて正しい経営判断をすることができます。
事業継続には常にお金がついて回るもので、これは切り離すことはできません。
かといって、事業をお金だけで判断することもできません。
つまり、「定量的情報(お金や数字で換算できる情報)」と「定性的情報(お金や数字で換算できない情報)」の両方を正しく得てはじめて、正しい経営判断をすることができるといえます。
経営者はまずはこれらを統合した感覚として、これらを身に着けていきたいところです。
まずは「定量的情報(お金や数字で換算できる情報)」をベースとして、ここに「定性的情報(お金や数字で換算できない情報)」の気づきを加えていくことで、感覚を身に着けていくことができます。
「定性的情報(お金や数字で換算できない情報)」とは、例えば、以下のような点です。
- 売上と曜日・天気の関係性
- 競合他社の動向
- 地域のイベントの動向
- 人員、立地、レイアウトなど
- 廃棄ロス
- 欠品による機会ロス