撤退することは前進することよりも難しいですが、それもまた避けられない判断といえます。
井上和弘著「社内埋蔵金をお金にする知恵」(中経出版)を参考として。
貸借対照表の見直しを避けたくなる理由
「損益計算書」だけではなく「貸借対照表」も定期的に見直し、把握し、判断することも重要でした。
「損益計算書」だけでは会社の状況を正確に把握することはできず、「貸借対照表」その他で会社の資産の状況、負債の状況も把握してこそ、正確な経営判断ができます。
これには、「貸借対照表」は一見して良し悪しが読みづらいということもありますが、他にも理由はあると考えられます。
「貸借対照表」をよくよく見てみると、借入金の総額であったり、在庫になってしまっている物の総額であったり、過去に購入を決断した設備で機能していない物であったり、回収が難航している売掛金であったり、あまり向き合いたくない現実も載っています。
”うちの会社はこんなに借入れしているのか”
”売れると思ってかつて仕入れた・作った商品・製品がこんなに残っているのか”
”必要だと思い切って購入を決断した設備投資で、活きていないものがこんなにあるのか”
”回収をあまり考えずに進んできた結果、売掛金残高がこんなにあるのか”
などといったことは後ろ向きなことでもあり、過去の判断の清算を迫られることでもあり、なかなか向き合いたくない現実でもあります。
”前進”にもエネルギーが必要ですが、”撤退”にはそれ以上にエネルギーが必要かもしれません。
撤退・損切りもまた、重要な判断
借入の状況を確認したうえで、「在庫」「設備」「売掛金」などを吟味し、売却や処分を検討する。
売上を創り、上げていくための前進活動に比べれば、上記の活動は、”撤退”であったり、”損切り”であったりします。
- 「在庫」
→不良在庫がないかどうか。売却可能なものは売却する。売却不能なものは処分することで経費(=節税)にすることもできる。 - 「設備」
→不要な設備がないかどうか。売却可能なものは売却する。実際に自分の目で見てみると、新たな発見もある。 - 「売掛金」
→滞留している債権がないかどうか。回収や売却が可能なものは回収・売却していく。不良債権であれば、償却(=節税)可能か検討する。 - 「現預金」
→活用できていない預金口座がないかどうか。資金を集約できないか検討する。
あまり気持ちのいい活動ではないと思いますが、生き残っていくためには、”撤退”も”損切り”も必要なものです。
後ろ向きな現実と向き合うことにもエネルギーが必要ですが、向き合って手を打つこともまた経営判断として必要なものであるといえます。
前向きに捉える
上記のうち、滞留してしまっている不良在庫の売却・処分、不要な設備の売却・処分、滞留してしまっている売掛金の償却などは、なかなか気持ちの乗らないものではあると思いますが、これら”含み損”のある資産の処分は、ある意味では、”含み損”になっているその損失を実現化する機会であり、”損失を計上することができる”と考えることもできますので、税務上の要件を満たせば、税額の減少にも繋がります。
そういった意味では、必ずしも後ろ向きなことばかりではなく、将来に向けて支出(税額)を抑えることもできるわけで、前向きに捉えることができる要素もあると思われます。