売上を上げた後の回収まで考えてはじめて、資金繰りが改善されていくように思います。
井上和弘著「社内埋蔵金をお金にする知恵」(中経出版)を参考として。
回収まで考える癖をつける
苦心してより多くの売上の契約を取ったとしても、回収できなければ手元資金は増えず、意味がないということになってしまいます。
また、回収できないとまでは行かなくとも、回収まで異様に時間がかかる、督促や管理などで異様に手間がかかるなどといったことがあると、それもまた問題でもあります。
”回収までが事業”というのは当たり前といえば当たり前のことなのですが、会社全体の意識やスタンスとして明確にしていないと、収拾がつかないということになります。
例えば、”営業部”や”経理部”など部署が分かれていると、回収は経理の仕事だから関係ない・回収は営業の仕事だから関係ない、というようになっていたりすることも考えられます。
「売掛金回収→買掛金支払」ならうまくいくは自明
事業であれば、仕入値よりも売値の方を高くしていることが通常です。
(もしそうでなければ、事業自体を根本的に見直す必要があると思うのですが。)
資金繰りという観点から見てみた場合、「売掛金回収→買掛金支払」という形が取れるのであれば、資金的に困るということは理屈上あり得ないということになります。
ということは、”資金的に困る場合がある”ということは、単純に、”「売掛金回収→買掛金支払」という形ではないから”ということが考えられます。つまり、逆転していて、「買掛金支払→売掛金の回収」という状態になっている、ということです。
資金繰りを改善するために考えてみるべきこととして、「売掛金回収をより早く」「買掛金支払をより遅く」という方向性があると考えられます。
スタンスを明確にする
売掛金回収について考えてみるとき、まず考えてみたいこととして、”債権管理に対する自社のスタンスが明確か”ということが挙げられます。
自社のスタンスが明確でないと、取引先から言われるがままを(自社でそれが資金的に対応可能か検討することなく)受け入れるということになりますし、社内での意識統一もできず、社内での権限も責任も明確でないということになってしまいます。
基本的な方向性としては、以下のような考え方になると思われます。
- 「受取手形」「売掛金」→少なくする努力、回収期間を縮める努力をする
- 「支払手形」「買掛金」「未払金」→支払条件設定などの段階で、支払期間を長くする努力をする
売掛金
自社で設定可能な回収期間を明確にしておきたいところです。
- 例えば、45日以内を超える回収期間となる契約は受けない、とする
- 相手先の信用度・金額高でランク付けし、それぞれで受け入れ可能な回収期間の限度を決めておく
- 回収遅れがあった場合、即座に対応する(督促対応は遅れれば遅れるほど手間がかかるため)
- 支払いの遅い先とは取引しない
- 利益(=売上ー仕入)の出ない仕事はしない
- 回収していなければ仕入代金は支払えないのが基本、と考える
- 受注力を高め、自社に有利な条件で契約できるような力をつける
手形
- 相手先の信用度・金額高でランク付けし、一定のランク以下の取引先との手形取引は拒否する
- 支払手形の限度を決めておく(手形は不渡り2回で倒産となる怖いものであるため)
- 融通手形には手を出さないなど
他業種も参考にしてみる
業種にもよりますが、”買掛金支払が先で売掛金回収が後”になりがちな業種の場合、他業種のやり方が参考になることもあります。
- 着手金
- 保証金・敷金
- 前売り(チケットなど)
- 事前決済からの発送(ECなど)
”買掛金支払が先で売掛金回収が後”を少しでも解消できる仕組み(事前回収)を考えてみたいところです。