「孫氏の兵法」から学べること。
87)九地編/九地での基本戦術
是故散地則無戰、輕地則無止、爭地則無攻、交地則無絶、衢地則合交、重地則掠、圮地則行、圍地則謀、死地則戰
是の故に、散地には則ち戦うこと無く、軽地には則ち止まること無く、争地には則ち攻むること無く、交地には則ち絶つこと無く、衢地(くち)には則ち交を合わせ、重地には則ち掠め、圮地(ひち)には則ち行き、囲地には則ち謀り、死地には則ち戦う。
散地 | 諸侯が自国領内で戦う場所 | 戦わないよう努める |
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軽地 | 敵国領内に入り、まだ深く入っていない場所 | 留まらないようにする |
争地 | 味方が占領すれば有利となり、敵が占領すれば不利となる場所 | 先に占領する。 敵に先に取られたら無理に攻撃しない |
交地 | 味方も行くことができ、敵も来ることができる場所 | 軍列を分断されないようにする |
衢地 | 諸侯の領地と接しており、先にそこを占領したものが天下を掌握できるといわれる場所 | 諸侯と友好関係を結ぶ |
重地 | 敵の国に深く侵入し、背後に敵の城が多くある状態の場所 | 敵の物資を奪い現地調達しておく |
圮地 | 山林・険しい地形・湿地帯など、行動しづらい場所 | 速やかに通過する |
囲地 | 入っていく道が狭く、引き返す道も曲がりくねっており、少ない敵でも味方の大軍を攻撃できてしまうような場所 | 速く脱出を試みる |
死地 | 迅速かつ必死に戦えば生きて帰ることができるが、攻撃に躊躇したり必死に戦わなければ全滅してしまうような場所 | 必死に戦う |
88)九地編/敵を分断し、チャンスを窺う
所謂古之善用兵者、能使敵人前後不相及、衆寡不相恃、貴賤不相救、上下不相収、卒離而不集、兵合而不齋、合於利而動、不合於利而止
所謂古の善く兵を用うる者は、能く敵人をして前後相及ばず、衆寡相恃まず、貴賤相救わず、上下相収めず、卒離れて集まらず、兵合して斉(ととの)わざらしむ。
利に合えば而ち動き、利に合わざれば而ち止まる。
戦いの巧い者は、敵の部隊同士を連絡できないよう前線と後方の連絡を遮断し、大部隊と小部隊とを相互に助け合わないようにさせ、敵の将と兵とに一体感を持たせないようにさせ、上下の指揮命令系統を混乱させ、兵たちが離散して集まらないようにさせ、集まってもまとまらないにさせる。
そして、味方にとって有利であれば動き、不利であれば動きを止め、チャンスを待つようにしたのである。
89)九地編/敵の迎撃方法
敢問、敵衆整而將來、待之若何、曰、先奪其所愛、則聽矣、兵之情主速。乗人之不及、由不虞之道、攻其所不戒也
敢えて問う、敵衆にして整いて将に来たらんとす。これを待つこと若何。
曰く、先ず其の愛する所を奪わば、則ち聴かん。
兵の情は速やかなるを主とす。人の及ばざるに乗じ、不虞の道に由り、其の戒めざる所を攻むるなり。
敵が大軍かつ整然と攻めてこようとするとき、どのように迎撃すればよいか。
まず、敵の最も大切にしているところを奪えばこちらの思い通りとなり、整然とした軍列も乱れることになる。
ここからの用兵の肝は、「迅速」である。
上記の敵の乱れに乗じ、思いもよらない方法で、敵の警戒していないような部分を奇襲するのである。