売上を上げたいと思っても、”行動レベル”にまで落とし込めなければ、前に進んでいくことができません。
「売上上げよう!」という掛け声
売上を上げることが必要だと思ったとしても、ただ「売上上げよう!」という掛け声だけで上がるものでもないものです。
自分自身の行動にとってももちろんのこと、経営層ではないスタッフにとっては特に、このような抽象的な掛け声を聞いたとしても、何をどうすればよいのか、なぜそうしなければならないのか、どういう行動が会社の方針・意図・ミッションに合っているか、といったことが分かりません。
行動レベルに落とし込む
一方、”売上を上げる”ということが、具体的な行動レベルにまで落とし込めていれば、進むべき方向が見えて、日常への具体的な変化が生まれ、それがひいては経営数字への具体的な反映につながっていくことになります。
よって、”売上を上げる”を、いかに行動レベルに落とし込めるかが重要なキーポイントになっているといえます。
また、落とし込み方に際しては、いかに”相手(できるだけ多くのスタッフ)がイメージしやすい言葉にできるか”という、相手を気づかうという視点が欠かせないものです。
どのように落とし込むかの基本形
どのように落とし込むかは、基本的には、業種にも状況にもよるものです。
しかし、ほぼどの業種にも共通する落とし込みの「基本形」があります。
まずは、売上という1つの枠を、まずはこの3つの要素に分解すると、それぞれの分野でできることを考えるヒントになります。
もしこれが大企業であれば、高単価商品を考える商品開発部、数量拡大を考える営業部、リピート率向上を担うカスタマーサポート部など、部署別にイメージしてもらいやすいように分解していくことができます。
行動レベルへの落とし込み例
「単価」「数量」「リピート」といったキーワードがあり、これらをベースにして、さらに様々な視点から様々な要素に分解していくと、行動レベルに落とし込みやすいよりイメージしやすい言葉にしていくことができます。
欠かせない視点
欠かせない視点は、「お客様が購入に至るまでの心理(戸惑いや決め手)をよく知ること」だといえます。
お客様が、どのようにして見つけてくれて、どのように見てくれて、何に迷い、最終的に自社の何を決め手に下さったのかをよく知ろうとし、ときにはお客様とよくコミュニケーションを取りつつ考え、ときにはアンケートを取って知ろうと試みることが重要と思います。
例1)店舗販売
店舗販売を行う業種の場合、お客様が購入するまでの戸惑いや決め手を視点に考えると、以下のようなステップに分解することが可能です。
- 店舗の前をどれくらいの人が通っているかを知る
- 上記のうち、店舗の前にどれくらいの人が足をとめてくれているかを知る
- 上記のうち、店舗のなかにどれくらいの人が足を踏み入れてくれているかを知る
- 上記のうち、どれくらいの人が購入に至ってくれているかを知る
- 上記のうち、どれくらいの購入品数かを知る
- 上記のうち、購入されている1品あたりの価格の状況を知る
ここまで落とし込むと、行動レベルに落とし込むイメージを持つことができます。
- 「②足止率」→メッセージボードを出す・工夫する、音楽を流す、店頭にサンプルを置く、定期的に店頭のリニューアルをする
- 「③入店率」→外から店内の様子が分かるようにする、メッセージボードに店内展示の様子を伝える
- 「④購買率」→POPを作る・工夫する、挨拶のレベルを向上させる、”相手のことを知る・聞く”接客を心がける
例2)リピートを向上させるには
リピートに着目して向上させようと考えると、お客様が購入するまでの戸惑いや決め手を視点として、以下のようなステップに分解することが可能です。
- 新規のお客様と既存のお客様に分ける
- それぞれのカテゴリーのお客様が、どれくらいリピート来店してくれているかを知る
- 上記のうち、どれくらいの人が購入に至ってくれているかを知る
- 上記のうち、どれくらいの購入品数かを知る
- 上記のうち、購入されている1品あたりの価格の状況を知る
- 「新規客①リピート来店率」→お見送りの接客レベルを向上させる、自店のウリを伝える、保管・手入れの方法を伝える、どのような商品をどのように発送したか丁寧に確実に伝える
- 「既存客①リピート来店率」→お見送りの接客レベルを向上させる、”いつもありがとうございます”とお声がけする、名前を覚えて接客する、前回購入してもらったものの状況を聞く
例3)販促効果を向上させるには
販促物やポスティングによる効果を向上させようと考えると、お客様が購入するまでの戸惑いや決め手を視点として、以下のようなステップに分解することが可能です。
- 販促の量・規模はどれくらいかを把握しておく
- 上記のうち、販促物への反響(問合せ)はどれくらいかを知る
- 上記のうち、どれくらいの人が購入に至ってくれているかを知る
- 上記のうち、どれくらいの購入品数かを知る
- 上記のうち、購入されている1品あたりの価格の状況を知る
- 「①販促量」→量を増やす、手段を増やす(ネット、SNS、店頭、ポスティング)
- 「②反響率」「③購買率」→販促物の内容を改善する、ターゲットを明確にする
例4)商品の法人向け売上(法人からの注文)を向上させるには
これは業種やその特性にもよりますが、通常個人向けの商品で法人にも需要があるような商品(例えば、お花など)で、法人向けにも売っていきたい場合、 お客様が購入するまでの戸惑いや決め手を視点として、以下のようなステップに分解することが可能です。
- 営業件数は現状どれくらいかを把握しておく
- 上記のうち、カタログ等選ぶための資料をどれくらい渡せているかを知る
- 上記のうち、どれくらいの法人が依頼に至ってくれているかを知る
- 上記のうち、購入されている1品あたりの価格の状況を知る
- 「①営業件数」→回る件数を増やす
- 「②カタログ渡し率」→配達などの際に話の流れからカタログを渡せる率を増やす
- 「③依頼数」→カタログの内容を改善する、注文担当者が注文しやすい構成にする
”安心・安全・ポジティブ”なミーティング
「売上上げよう!」という掛け声だけで、 その要素の分解と落とし込みをスタッフに丸投げするのでは、当然のことながら、経営者の存在意義が問われます。
経営者自身の目で、実際に、お客様がどのようなときに足を止めてくれているか、どのようなときに入店して詳細を見てくれているか、どのようなときに購入を決断してくれているか、といったことを数多く目にして、自社の理念・ミッション・ビジョンとも照らし合わせたうえで、どのように分解できるか考えてみる必要があります。
また、行動レベルへの落とし込みにあたっても、スタッフひとりひとりが、普段どのような業務をどのように行っているかを数多く目にしておかなければ、より多くのスタッフに分かる言葉で落とし込むことができません。
そのうえで、より多くの目やアイデアを募るためにスタッフとミーティングするにおいては、”安心・安全・ポジティブ”な場作りのなかで、スタッフがより意見を出しやすいような仕組みづくり、意見を受け入れる度量、が試されることになります。