新型コロナワクチンの職域接種において、会社が会場準備費用などを負担して従業員等へ無償でワクチン接種した場合、それが現物給与として従業員の所得税の対象になるかどうか?
国税庁「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」に見解が出ていました。
目次
国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ
国税庁のFAQが令和3年7月2日更新され、職域接種関連の見解が示されていました。
令和3年7月2日、追加されたのは以下の項目です。
- ワクチンの職域接種に係る会場準備費用の負担を求めない場合の取扱い(問3-2)
- ワクチンの職域接種により接種を受けた者の所得税の課税関係(問9-6)
- ワクチンの職域接種に係る接種会場までの交通費の取扱い(問9-7)
- ワクチンの職域接種に係るデジタルワクチン接種証明書の取得費用の取扱い(問9-8)
まとめ
先に結論をまとめてみたいと思います。
問いの要約 | 答えの概要 |
---|---|
職域接種関連費用は、 法人の損金になるか? | 損金になる |
職域接種の無償提供は、 従業員の所得税の対象か? | 所得税の対象にならない |
接種会場までの交通費は、 従業員の所得税の対象か? | 所得税の対象にならない (相当額であることが前提) |
ワクチン接種証明書取得費用は、 従業員の所得税の対象か? | 所得税の対象にならない |
職域接種の会場準備費用は、会社の必要経費(損金)になるか?
「ワクチンの職域接種に係る会場準備費用の負担を求めない場合の取扱い(問3-2)」です。
結論としては、”法人の必要経費(損金)になる”というものです。
内容を要約すると、以下のような考え方によるものです。
- 法人が職域接種する場合、様々な費用(会場使用料、会場設営費用、医師看護師等派遣費用等)がかかる。
- 法人は市町村から接種委託料(2,070円(税抜)×接種実施回数)は得るものの、費用の方が上回るケースも十分考えられる。
- 対象は、その法人の役員・従業員のほか、関連会社の従業員等、取引先の従業員等、近隣住民
→税務上の寄附金や交際費などといった指摘は考えられるか? - 新型コロナの感染拡大防止は、業務遂行に必要な費用と考えられる。
→税務上の寄附金や交際費などには該当しない。 - 近隣住民が参加するとしても、取扱いは変わらない。
職域接種の無償提供は、従業員への現物給与として所得税の対象になるか?
「ワクチンの職域接種により接種を受けた者の所得税の課税関係(問9-6)」です。
結論としては、”従業員の所得税の課税対象にはならない”というものです。
内容を要約すると、以下のような考え方によるものです。
- 職域接種の会場準備費用は、従業員への現物給与(=所得税の対象)になるか?
- 職域接種は、市町村で実施されている接種と同様のもの。
- 職域接種だからといって、特別に税負担が生じることはない。
職域接種の交通費支給は、従業員への現物給与として所得税の対象になるか?
「ワクチンの職域接種に係る接種会場までの交通費の取扱い(問9-7)」です。
結論としては、”従業員の所得税の課税対象にはならない”というものです。
内容を要約すると、以下のような考え方によるものです。
- 接種会場までの交通費は、従業員への現物給与(=所得税の対象)になるか?
- 接種会場までの交通費は、職務命令により出張する場合の旅費と同様。
- 交通費として相当額であれば非課税。
ワクチン接種証明書の取得費用は、従業員への現物給与として所得税の対象になるか?
ワクチンの職域接種に係るデジタルワクチン接種証明書の取得費用の取扱い(問9-8)
結論としては、”従業員の所得税の課税対象にはならない”というものです。
内容を要約すると、以下のような考え方によるものです。
- デジタルワクチン接種証明書の取得費用は、従業員への現物給与(=所得税の対象)になるか?
- デジタルワクチン接種証明書を受けることが、法人の業務遂行上必要であれば、給与に該当しない(所得税の課税対象にはならない)。