外国人労働者が日本企業で働くケースも増えてきています。
外国人労働者向けに年末調整の説明をする場合、どのようにすればよいのでしょうか。
外国人労働者の働き方のパターンを整理する
外国人労働者が、どのような場合に、どのような日本の給与の所得税の仕組みを受けるか、をまず整理する必要があります。
区分と適用される税制
居住者
「居住者」という区分に当てはまれば、日本人と同じく年末調整をします。
非居住者
「非居住者」という区分に当てはまれば、20.42%の所得税の源泉徴収のみで完結です。
※外国人留学生アルバイトについて
日本の大学・短期大学に通いながらアルバイトをしている場合も考えられます。
※ここでいう留学生は、学校教育法第1条に規定する学校になるため、日本語学校や専門学校は除外されます。
この場合も、居住者か・非居住者かの判定で、適用するルールを当てはめることになります。
その際、在留期間が1年未満(交換留学など)となっていると、「非居住者」に該当し、20.42%の所得税の源泉徴収、ということになります。
しかし、日本と租税条約を締結している国からの留学生であれば、租税条約によっては、税金が免除となる場合があります。
免除の規定に該当する場合には、「租税条約に関する届出」を行うことにより、免除を受けることができます
(遡って適用させることもできます。)
これは、中国は免除、タイは5年間免除、など、国によって異なっているため、都度、確認が必要です。
また、留学生の場合、「資格外活動許可」を受けてはじめてアルバイトすることができるため、その許可の確認が必要です。
※技能実習生について
技能実習生の制度でもって、日本で働いている外国人(ビザに技能実習と記載がある方)という場合も考えられます。
その場合も、居住者か・非居住者かの判定で、適用する税制を当てはめることになります。
居住者か非居住者かの判断
「居住者」に該当するかどうかは、以下の判断基準で判定します。
- 国内に住所を有する
または - 国内に現在まで引き続き 1 年以上住んでいる(居所を有している)場合
→「居住者」に該当(→日本人と同じく年末調整)
「住所」とは
個人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定することとされています(所基通2-1)。
これは、国籍、ビザの種類、住民票の登録の有無などは無関係で判定されます。
また、以下のような場合には、国内に住所があると推定されます。
- 国内において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業に就いている(所基通3-3)
※在留期間が契約等であらかじめ明らかに1年未満と定められている場合を除き、国内で働くことになった場合には居住者になるものとして取り扱われることになっています。 - 日本国籍があり、かつ、日本に配偶者や親族がいる等の状況に照らし、国内に継続して1年以上居住すると推測される場合
「居所」とは
人が相当期間継続して居住しているものの、生活の本拠とまではいえない場所をいうとされています。
日本の所得税の仕組みを説明するための資料を活用する
国税庁の年末調整のページ(令和2年分)を見ると、外国語(英語・中国語・ポルトガル語・スペイン語・ベトナム語)版の資料が準備されています。
具体的には、以下の資料が準備されています。
例えば、日本における給与に係る源泉徴収制度の概要 令和2年版には、日本の給与の所得税の仕組みや年末調整などが説明されており、その外国語版があるので、それを活用して説明することが可能です。
また、居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へという書類においては、国外の非居住者である親族を扶養に入れる場合に必要な書類の説明がされています。
外国語版もあるため、本国の親族などを扶養に入れる場合の説明の資料として活用することができそうです。
必要書類とは、具体的には、①親族関係書類(外国政府が発行する戸籍謄本等)、②送金関係書類(銀行の外国送金依頼書の控え等)が必要となります。
各種申告書についても、各種申告書(扶養控除等(異動)申告書など)のなかで、外国語版があるので、そちらを活用することも可能です。
例えば、扶養控除等申告書の英語版は以下のような感じです。
まとめ
外国人労働者が日本の会社で働くことは今後増加していくため、どのような所得税の徴収をするか・年末調整をするのかどうかについても、確認と対応が必要になってきそうです。