創業直後の物珍しさ、ちょうど通った補助金、世の中の一時的なブーム。事業には、必ず「追い風」が吹く時期があります。
やっかいなのは、その追い風がいつか必ず止むこと、そして止んだ後に何が手元に残るかが事前にはなかなか見えないこと。
深津貴之・けんすう(古川健介) ・尾原和啓著「メタスキル」(NewsPicksパブリッシング)を読んで。

今、あなたの事業を押している「追い風」の中身
まず、自社に吹いている追い風が何なのかということ。
「属性」とは、一時的に効いている強みのこと
たとえば、「若いこと」「学生であること」そのものが、今の時代には希少な「属性」として機能し、注目や評判を集めるきっかけになります。
そしてその注目が、人とのつながりという目に見えない資本への入口になっていく、という流れです。
つまり、「属性」とは、その事業に一時的に効いている強みのことだと言えます。
創業したばかりの物珍しさ。
地域でいち早く始めた先行者としての立ち位置。
採択された補助金や助成金という資金的な後押し。
世の中の流行に乗った商品。
社長個人の人脈や、若さからくる体力そのもの。
どれも立派な強みですが、共通点があります。
それは、自分の努力だけで生み出したというより、”今この時期だから効いている”という性格を持っていることです。
追い風には、必ず賞味期限がある
こうした属性には、「賞味期限」というものがあります。
若さも、物珍しさも、流行も、永遠には続かないものです。
補助金には交付期間があり、先行者の優位も、後発が追いついてくれば薄れていきます。
つまり、今の好調が「自分の実力」なのか「追い風のおかげ」なのかを見分けておかなければ、いざ追い風が止んだときに足元をすくわれることになってしまいます。
補助金で導入した設備の返済が始まった途端に資金繰りが苦しくなる、創業ブームが落ち着いた頃にリピートが伸びていない。
追い風があるうちは、その存在にすら気づきにくいのです。
だからこそ、好調なときほど、”この風はいつまで吹くだろうか”ということを知っておく価値があります。
追い風が止む前に、何に「変えて」おくか
追い風の正体と期限が見えたら、次はそれを何に変えておくべきか。
注目を、「信頼」へ。集客を、「リピート」へ
属性が効いているうちに、そこで得た注目やつながりを、”劣化しにくい資産”へ移し替えていくことです。
”若いから注目される”フェイズで終わるのではなく、「あの人だから頼みたい」・「この人の発信は信用できる」と思われるフェイズへ移る。
いわば、「資産変換(ピボット)」です。
”安いから選ばれる”・”目新しいから来てくれる”で終わらせずに、「あの店だから」・「あの会社だから」へと選ばれる理由を入れ替えていく。
一時的な集客を、リピートと紹介に変えていく。
価格や流行で集めたお客様が一度きりで去っていくのか、それとも信頼の関係に変わっていくのか。
ここで事業の数年後は大きく分かれることになるのです。

貸借対照表に載らない資産を育てる
「信頼やブランド」は、決算書の貸借対照表には、金額として載りません。
広告費はかければ費用として消えていくものの、得た「信頼」は表に載らないまま、しかしながら、静かに積み上がっていく資産なのです。
追い風によって一時的に膨らんだ売上は、いわば波のようなもの。その波が引いても固定費は毎月かかり続けるのです。
だとすれば、波があるうちにやるべきは、その勢いを「毎月の固定費を安定して支えてくれる持続的な粗利源」に変えておくこと。
一時的に入ってきたものを、持続する資産へと変換する。
事業でやろうとしていることは、構造としてはこれとよく似ているといえます。
AIは「変換のレバレッジ」になる
この資産変換を加速させる道具として、AIをどう位置づけるべきか。
発信量・試行回数・学習速度を上げる
属性を資産に変えていく作業において、AIは、大きなレバレッジ(てこ)になると述べています。
発信の量を増やし、試行回数を増やし、学習の速度を上げる。
これらはどれも、信頼や実績を積み上げるスピードを速める方向に働きます。
お客様向けの情報発信を続けるのは、信頼という資産を育てる王道ですが、続けるのはとても大変なことですが、AIを使い、発信のたたき台づくりや、過去の問い合わせの整理を任せれば、同じ時間でより多くの接点を持つことができます。
追い風が吹いているうちに、その勢いを本物の信頼へ変換する作業を、AIで何倍速にもできるという発想です。
コモディティ化の時代に、何を残すか
AIで誰でも同じことができるようになるということは、裏を返せば、その能力が「コモディティ化」していくということ。
追い風が止んだとき、手元に残ったのが”AIで誰でもできること”だけだとしたら、それは差別化の武器にはなりません。
だからこそ、問われるのは、「何を伸ばすか」だけではないく、今ある追い風を、”どの資産に、どれだけ早く変えていくか”。
この変換の設計図を持っているかどうかが分かれ目になると考えられます。
追い風は、いつか必ず止みます。
けれど、止む前に何に変えておいたかで、その後の景色はまるで違ったものになるのです。
まずは自社の追い風が今いくつ吹いていて、それぞれの賞味期限がいつ来そうか、そしてそれを何という資産に変えようとしているのかを考えてみる。
ここから、変換の設計が始まります。

