【メタスキルについて考える】スキルは目減りし、信頼は増えていく|AIに代替されない”あなただから”を作るには

簡単には真似できないからこそ価値を持っていたものが、AIの登場で少しずつ「機能」へと姿を変え始めているものの、”財務”の発想で整理すると、いま起きていることとこれからどこに力を注げばいいのかが少し見えてきます。

深津貴之・けんすう(古川健介) ・尾原和啓著「メタスキル」(NewsPicksパブリッシング)を読んで。

目次

機能的なスキルに「賞味期限」がある

これまで、ひとつの専門技術を身につけるには、何年もの時間が必要でした。

その時間こそが参入障壁となり、身につけた人に優位性を与えてくれていました。

スキルは「消費される資産」に近い

かつては専門家に依頼しなければできなかった調べもの、文章づくり、設計や下準備が、いまや誰でも、ほぼ一瞬で形にできるようになりつつあります。

昨日まで価値の高かったスキルが、今日には「あって当たり前の機能」のひとつになる。

財務の言葉を借りるなら、スキルは「消費される資産」に近いといえる状態かもしれません。

機械や設備のように、買ったときは大きな価値を持っていますが、使うほど、そして時間が経つほど価値が下がっていきます。

帳簿上、この目減り分は毎年「減価償却費」という費用に振り替えていきます。

スキルもこれと似ているのではないか。

磨いた瞬間がピーク。かつ、放っておけば市場価値は下がっていく。

価値を保つには、学び直しという再投資を続けなければなりません。

「単利の資産」と「複利の資産」を見分ける

スキルの目減りに気づいたときに、次に大事になるのは「では、何に力を注げば積み上がるのか」という問いです。

ここで、お金の世界でおなじみの二つの言葉が効いてきます。

単利と複利です。

増えない努力と、増えていく努力

単利は、元のお金にだけ利息がつく仕組みです。

100万円を預けて毎年3万円ずつ。

何年経っても、増える幅は3万円のまま変わりません。

一方で、複利は、増えた利息にもさらに利息がつきます。

雪だるまのように、増える幅そのものが年々大きくなっていきます。

この違いは、働き方にもそっくり当てはまります。

スキルを切り売りして、その都度こなしていく働き方は、単利に近いものです。

どれだけ頑張っても、成果はそのとき限り。

頑張っているのに楽にならない感覚の正体は、ここにあるといえます。

信頼だけが「複利で増える資産」になる

一方で、複利のように増えていくものがあります。

それが「信頼」です。

ひとつの仕事を丁寧にやり切るたびに、相手の中に「この人なら安心して任せられる」という評価が積み上がっていきます。

その評価が次の依頼を呼び、口コミや紹介を生み、また新しい信頼を連れてくる。

増えた分が、さらに増える幅を生む。

まさに複利の構造です。

経営でいえば、広告は費用、信頼は資産、という言い方ができます。

広告は出し続けなければ効果が止まります。

信頼は一度積み上がれば、自分が動いていない間も働き続けてくれます。

なお、空いた時間やお金を学びに再投資して人的資本を磨くという発想もとても大切ですが、ここには一つ注意が要ります。

手元の資金を削ってまで投資に回すのは、中小企業の場合かえって危ういことが少なくありません。

守るべき資金は守ったうえで、生まれた余力を信頼づくりに振り向けるという点こそが重要といえます。


スキルを「信頼」に移し替える

スキルが消費される資産で、信頼が複利で増える資産だとすれば、やるべきことははっきりしています。

目減りするスキルを、増えていく信頼へと、意識して移し替えていくことです。

AIが立ち入れない「あなただから」の領域

AIは、正解を高速で差し出す検索エンジンのような存在です。

調べれば分かること、誰がやっても同じ答えになることは、これからどんどんAIの側に移っていきます。

裏を返せば、AIがどれだけ賢くなっても立ち入れない場所が残ります。

それが「正解かどうか」ではなく、「あなただから頼みたい」と思ってもらえる関係です。

同じ答えが返ってくるなら、わざわざ人に頼む理由はありません。

それでも、人が人を選ぶのは、過去のやり取りで生まれた安心感や、価値観への共感があるからであると考えられます。

この感情に根ざしたつながりは、なかなか簡単には他に置き換えられないといえます。

スキルの「使い道」で信頼を残す

どうやって移し替えるのか。

ひとつの考え方は、スキルそのものを売るのではなく、スキルを使って相手の課題を解決した「体験」を残すことです。

正確な作業や速い処理は、いずれAIが肩代わりしていきます。

そこで生まれた時間を、相手の話をじっくり聴く、背景を一緒に考える、その人だけの提案を組み立てるといった、人にしかできないことに振り向ける。

作業の正確さで評価される段階から、関わり方そのもので選ばれる段階へ。

ここを意識して動けるかどうかが、これからの数年の分かれ目になりそうです。

その積み重ねが「この人に任せたい」という信頼となり、費用に頼らず売上を支える資産になっていくと考えられます。

スキルという目減りする資産を、信頼という複利で増える資産へ。

この移し替えを、まだ猶予のあるうちに始めておく。

それが、AIに代替されない働き方の、いちばん確かな入り口になるものと考えています。

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この記事を書いた人

長崎で活動する
税理士、キャッシュフローコーチ

酒井寛志税理士事務所/税理士
㈱アンジェラス通り会計事務所/代表取締役

Gemini・ChatGPT・Claudeなど
×GoogleWorkspace×クラウド会計ソフトfreeeの活用法を研究する一方、
税務・資金繰り・マーケティングから
ガジェット・おすすめイベントまで、
税理士の視点で幅広く情報発信中

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