事業において、手元資金はどれくらいあると安心できるのか。
松波竜太編著・監修、資金調達相談士協会著「中小企業の財務改善ノウハウ」(第一法規)を参考にして。
なぜ手元資金の余裕が必要なのか
手元資金に余裕があるかどうかは、事業において、大きな影響を及ぼします。
手元資金に余裕があると、以下のようなメリットがあります。
- 良い立地の店舗を借りることができる
- 質の高いものをすぐに作ることができる
- すぐに作ることができるので、早く納品することができる
- 余裕をもった交渉により、良い条件で安く仕入れることができる
- 広告に予算を割けるため、優秀なクリエイターに広告やマーケティングを依頼することができる
- 銀行の評価が上がるので、低金利で借入することができる
- タイミングよくビジネスチャンスを掴むことができる
事業は、”選択肢が多い者”に有利に働くものです。
選択肢が多ければ、余裕をもった交渉を行うことができ、チャンスを掴むことができるためです。
選択肢の多い状態とは、具体的には、手元資金が多い状態と換言することができます。
売上が増えても、手元資金は増えない
手元資金を増やすには、”売上を増やす”・”増資を受ける”・”借入する”といった方法が考えられます。
中小企業においては、出資者=代表取締役であることが多く、外部から増資を受けるというのが現実的ではありません。
そして、”売上を増やす”と手元資金が増えると考えがちですが、実際には、”売上が増えても、手元資金は増えません”。
- 売上が増えると、売掛金が増える(入金まで時間がかかる)
- 売上が増えると、仕入・人件費・経費が増える
- 売上が増えると、在庫が増える
上記のとおり、投下した資金が利益が上乗せされて完全に回収されるまでには、かなり遠い道のりを辿ります。
よって、”売上が増えても、手元資金は増えない”のです。
つまり、手元資金を増やすには、”借入をする”が起点になるということになります。
そして、借入をするには「利益を出す」ことが必要になるのです。
手元資金はどれくらいあると安心か
手元資金がどれくらいあると、安心で余裕のある状態といえるのか。
一般的に、「月商の3ヶ月分」といわれています。
現実には、仕入・経費・納税見込・借入返済など、1ヶ月会社を回すために必要な資金が手元に何ヶ月分あるかによって、資金繰りの楽さが決まります。
そこに利益の乗った「月商」であれば余裕をもった数字であり、その何ヶ月分手元にあるのかが分かりやすいバロメーターになります。
よって、月商の3ヶ月分あれば、資金繰りに追われることがないと考えることができるのです。
月商の1ヶ月分 | 資金繰りに不自由を感じる |
月商の2ヶ月分 | 突発的費用・賞与や・納税などに不安はあるものの、まずまず余裕をもって経営をすることができる |
月商の3ヶ月分 | 余裕を持った経営をすることができ、銀行からよりよい融資提案を受ける機会が出てくる |