成長期における銀行とのスタンス

成長期は、銀行との関係性において、どのような点に留意すべきか。

松波竜太編著・監修、資金調達相談士協会著「中小企業の財務改善ノウハウ」(第一法規)を参考にして。

目次

成長期ほど資金不足が生じやすい

”売上が増えていけば、手元資金は増える”と思いがちですが、実際はそうではありません。

売上が増えていけばいくほど、手元資金は足りなくなっていき、資金不足が生じやすい状況が生まれます。

以下が理由です。

  • これまでよりも仕入資金が必要になる
  • より売上を上げるために、人件費が増加する
  • より売上を上げるために、設備投資が必要になる
  • 仕入れてもすぐに売れるわけではなく、在庫が増える
  • 契約が決まっても、売掛債権となり、すぐには回収できない

増加運転資金で検討してもらう

売上も利益も増加傾向にあるのであれば事業に対する見込みもあるため、銀行から資金調達することで、成長を加速させていくことができます。

売上が増加傾向にあるなかで上記のような状況に陥ることは銀行でも把握しており、銀行では「増加運転資金」として扱ってくれ、融資審査も通りやすくなります。

会社側からも「増加運転資金」であることをアピールしていきたいところです。

複数行取引をどう考えるか

成長期は入った場合、少しずつ取引銀行を広げていき、資金調達の窓口を増やしておきたいところです。

金融機関には、大まかに、①日本政策金融公庫など、②信用金庫等、③銀行、という3カテゴリーがあります。

それぞれに融資方針も異なることから、資金調達の窓口のバリエーションを増やしていくには、まずは、それぞれのカテゴリーから取引金融機関を決めていくのもひとつです。

その後、同カテゴリー内の他金融機関も加えていく、という流れです。

具体的に、何行くらいの金融機関と取引していくべきなのかは、会社の事業規模によっても変わっていきます。

目安となるのは、「自社の融資総額がどれくらいか」ということと「取引金融機関の支店長決裁枠がどれくらいか」ということのバランスと考えられます。

支店長決裁枠は、金融機関や支店規模にもよりますが、公庫・信金・地銀等では、おおむね初取引で500万円、既存取引で1,000万円ほどといわれています。

自社の事業規模と必要となる融資総額がいくらかということから、自社が何行と取引するとよいのかの目安を知ることができます。

プロパー融資への移行を目指す

創業期から成長期にかけては、公的な保証機関である「信用保証協会」の保証付き融資を受けることが一般的です。

銀行も、公的な保証機関が保証してくれることから、創業期から成長期にかけての企業に対しても積極的に融資を検討してくれる面もあります。

そうなると、反面、”どの銀行(日本政策金融公庫除く)に融資を申し込んでも、最終的に保証協会の保証審査に行き着く”ことになります。

とすると、複数行取引をしている意味も薄れてしまうため、次の段階として、信用保証協会の保証がつかない「銀行の直接融資(プロパー融資)」へと移行できるかがポイントになってきます。

銀行にとってはリスクが増えることでもありますし、積極的には提案されないため、会社側で財務的な基盤が整った段階で、銀行に安全性をアピールし、プロパー融資への移行を交渉していくことになります。

”財務的な基盤”は、具体的には、以下のような状況と考えられています。

  • 手元資金:月商2ヶ月分以上
  • 自己資本比率:20%以上
  • 借入総額:2,000万円以上

これらの状況が整った段階で、「折り返し融資」のタイミングで交渉していくのがスムーズと考えられます。

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