創業期における銀行とのスタンス

創業期は、銀行との関係性において、どのような点に留意すべきか。

松波竜太編著・監修、資金調達相談士協会著「中小企業の財務改善ノウハウ」(第一法規)を参考にして。

目次

会社設立時の留意点

事業を行ううえで、借入・銀行口座開設など、銀行との関係性は欠かせないものです。

会社を設立するにあたっては、銀行取引もしっかりと意識しておく必要があります。

資本金の考え方

少なすぎる資本金では、銀行からの信頼を得にくいと考えられます(事業への本気度など)。

できれば「100万円」程度の資本金は確保しておきたいところです。

税制の面で考えると、消費税や住民税均等割などの面で、「1,000万円」もひとつの目安になります。

また、保証協会から保証を受けることを想定する場合、保証協会が中小企業の支援を旨としていることから、一定の資本金額(小売業・飲食業・サービス業:5,000万円、卸売業:1億円以下、製造業・情報処理サービス業:3億円以下)を超えると保証協会の保証を受けることができなくなるという点も考えておきたいところです。

本店所在地の考え方

レンタルオフィス、バーチャルオフィスの場合、銀行口座の開設が難しいと考えられています。

どうしてもレンタルオフィスなどを本店にしたい場合、最初は自宅で本店とし、銀行口座開設後に異動させることになりますが、結局、後々、借入などの際には改めてレンタルオフィス等であることがネックになってくる可能性はあると考えられます。

本店所在地とする場所の近くに、銀行が多いかどうかもポイントになります。

銀行が多ければ複数の銀行と取引することができますが、少なければ少数の銀行に依存しなければならないことになります。

また、”小さな会社には小さな銀行・小さな支店、大きな会社には大きな銀行・大きな支店”が基本と考えられているため、事業規模に見合った銀行・支店があるかどうかも確認しておきたいところです。

役員・株主

反社会勢力や銀行のブラックリストに載っている人物が入っていると、口座開設すらできない可能性があります。

事業目的

事業目的に、金融業、一部の風俗営業、公序良俗に反するもの、投機などが入っていると、融資を受けづらいことになります。

また、制度融資、保証協会の保証などにおいては、対象外となる事業種目を定めているところもあるため、その点にも留意が必要と考えられます。

決算月

季節性のある業種であれば、「事業年度の前半に最も売上の上がる期間を持ってきて、事業年度の後半に売上が下がる期間を持ってくる」を基本に検討していったほうがよいと考えられます。

後半に売上が上がる期間を持ってきてしまうと、最後の最後まで利益の予測が立たず、税金の額の予測ができないということになってしまいます。

口座開設

規模感の見合う銀行・支店がよいとはいっても、最寄り支店が遠い場合、実態確認がしづらいことから口座開設の審査に時間がかかってしまうということも考えられるため、遠すぎない銀行・支店がよいと考えられます。

あるいは、口座開設にそれほど時間がかからないネット銀行や信金等でいったん作っておくことも考えておきたいところです。

創業融資の捉え方

捉え方を整理する

”借金は怖い”と考えがちですが、一般的な銀行からの事業用の融資であれば、利率も無理のないものです。

また、捉え方として、以下を肝銘しておきたいところです。

「融資を受けるのは手元資金を厚くするためであって、全額を使うためにするのではない」

ひとたび”お金のない状態”に陥ると、そのことが気になり、本業に支障がきたす可能性もあります。

であれば、借りてでも手元資金を厚くしておいたほうがよいと考えられます。

あくまで手元資金を厚くするために借りるのであって、使い込むために借りるのではないため、気持ちのコントロールが難しいような場合には、通常口座以外に”借入金口座”を作り、そこへプールしておくなどの方法も考えられます。

創業融資のタイミング

創業融資の申込みのタイミングは、”資金が尽きる前”では遅いと考えられます。

銀行側も、会社の資金が尽きる前では、”怖くて貸せなくなってしまう”からです。

また、創業して半年以上経過し、資金的に苦しくなってから創業融資を申し込んだ場合、銀行も半年も経過していればその実績を見たくなります。

創業してすべてが順調にいけばよいですが、実際には軌道に乗るまでには時間がかかるものです。

創業融資のタイミングで最も適切なのは、”創業前後”と考えられます。事業計画ベースで審査してくれるためです。

創業時に融資相談しやすいのは、日本政策金融公庫の新創業融資制度公的な制度融資(創業支援制度)がありますし、併用することも可能です。


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