「何らかの分野で1位を取りましょう!」とよく言われる言葉ですが、どのように考えればよいのか、迷うところです。
竹田陽一著「小さな会社★社長のルール ランチェスター経営成功への実践手法」(フォレスト出版) を参考として。
どのような分野で戦っていくのか
会社のお金の流れの起点は、「粗利益」です。
お客様がお金を自社の商品と交換してくれてはじめて、会社のお金の流れの起点ができ、それが広がっていくことで経営数字全体の改善へと繋がってきます。
例えば、以下のような”直接お客様との接点を持つどこかの分野”のうち、何らかの分野で1位を取り、占有していく施策をとることで、会社に十分な利益が残るだけの「粗利益」を稼ぎ出すことができるといわれています。
- 商品力
- 地域
- 客層
- 業界のなかでも強い専門領域
- 顧客対応(リピート率)
これらの要素は、あくまで大まかな”領域”を示しているに過ぎません。
実際には、これに、様々な要素を掛け合わせていくことにより、”大企業が入り込めない複雑な地形”を作り出すことが可能となります。そうしてはじめて自社の優位性を示していける道が切り開かれてくることとなります。
逆にいうと、何らかの形で、これらの領域のうちのどれかにおいて優位性を示すことができなければ、十分な利益を確保することができず、苦戦を強いられることになってしまいます。
業種別の例
上記のように、「何らかの分野で1位を取りましょう!」 ということはよく言われることではあるのですが、なかなかイメージがしづらい部分があります。
単に、「商品力」、「地域」、「客層」、「業界のなかでの専門領域」、「顧客対応(リピート率)」という領域を示されただけでは、自社がどのように戦略を立てればよいのか、なかなか分かりづらいのです。
より具体的に考えてみると、例えば、業種によってもアプローチが異なってきます。
- メーカー
→「商品力」の分野において、工夫の選択肢が多い - 卸売業
→商品力の分野では工夫のしようがないため、別の選択肢を探る - 商品の配送コストが高くつく業種・1回あたりの取引が小口である業種
→「地域」の分野で何らかの戦略を絞っていけないと、利益が出にくい - 通信販売が多い業種
→「商品力」に加えて、新規開拓をしたり「顧客対応(リピート率)」の分野で戦略を考える - 小売業・飲食業
→「客層」や「地域」の分野において、工夫の選択肢が多い
”1位づくり”は本当に無理なのか、発想を柔軟にして考えてみる
”1位づくりは無理だ”と諦めてしまうということは、すなわち「商品力」「地域」「客層」「業界のなかでの専門領域」「 顧客対応(リピート率)」 のいずれにおいても、他社と競っても勝てない可能性すら出てきます。
それは 、 ”直接お客様との接点を持つどこかの分野” のいずれにおいても負けてしまうことを意味しており、それは「粗利益」 を稼ぐことができない(あるいは「利益」を確保することができない)ことにも繋がります。
かといって、 「何らかの分野で1位を取りましょう!」 と言われても、どうにも途方もないことに思えてきます。
このようなときは、考え方を「自社の規模(自社の経営資源)に合わせて、目標の規模を合わせる」と考えてみるとよい、といわれています。
「商品力」「地域」「客層」「業界のなかでの専門領域」「 顧客対応(リピート率)」という軸は、 ”直接お客様との接点を持つどこかの分野” を指しており、軸から外すことはできません。
しかし、前述のとおり、ここに、様々な要素を掛け合わせることによって、”自社の規模にあわせて、自社なりに優位に動き回ることができる複雑狭隘な地形”を作り出していく、と考えると、少し身近に思えてきます。
ここには、正解はありません。
ここにこそ、各社ならではの戦略や創意工夫が試されてくるのだといえます。