電子帳簿保存法に対応するために、無料のクラウドストレージでどこまで対応できるか。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法そのものは歴史は比較的古く、平成10年度税制改正によって誕生しています。
ただ、かつては要件が細かく負荷もかかるものであったため、令和3年度税制改正以前は、一部の事業者のみで利用されていたもの、という印象があります。
全事業者の強制適用という形で注目が集まったのは、令和3年度税制改正でした。
電子データで受領している請求書等について、これまでは紙保存が認められていたため、”とりあえず証憑関連はすべて紙保存しておけばよい”という考え方で進むことができていました。
令和3年度税制改正においては、証憑を3区分に分けたうえで、そのうちの電子データについては電子データ保存(+細かな保存要件等)が強制、紙保存不可とされたのでした。
令和3年度税制改正の内容については、全事業者強制となる電子データについて、特に保存要件等の充足のための煩雑な対応が求められることもあり、その後の令和4年度税制改正において猶予期間が設けられ、令和5年度税制改正において新たな緩和措置が設けられています。
電子帳簿保存法の全体像
電子帳簿保存法の全体像をまとめると、以下のようになります。
無料のクラウドストレージで対応できるかどうか
GoogleDrive、Dropbox、Onedrive、box、AmazonDrive、iCloudなど、クラウドストレージは様々あります。
例えば、「電子取引の保存」において、上記のようなクラウドストレージを利用することでより簡単に対応することができるといったことはあるかどうか。
電子取引の保存の要件から考える
無料のクラウドストレージを利用することにより、以下の要件を満たすにあたって何らか優位に進められるようなことがあるかどうかがポイントになりそうです。
要件 | ポイント |
---|---|
システム書類の備付 | ・クラウド会計ソフトの場合、オンラインでのマニュアル・ヘルプを画面で示せれば可 |
見読可能性の確保 | ・ディスプレイ等(速やかに出力) |
検索機能の確保 | 【原則(システム導入等)】 ①「年月日」「金額」「取引先」 ②「年月日」「金額」→範囲指定 ③上記2以上の項目を組み合わせて条件設定 ※ダウンロードの求めに応じれば、①のみで可 【システム導入しない場合】 以下のいずれかの方法 ①ファイル名→「20221031国税商事110000」など ②エクセル等での索引簿 【小規模事業者(2023年以降、2期前の売上高が5,000万円以下)】 ・出力画面の提示のみで可 |
真実性の確保 | 以下のいずれかの措置 ①タイムスタンプ付きのデータを受け取る ②タイムスタンプ付きのデータにして、保存者情報確認できるようにする ③訂正削除システムを利用する ④事務処理規定 |
「システム書類の備付け」については、各ストレージにオンラインマニュアルやヘルプがあれば満たしそうです。
「見読可能性の確保」については、PCとディスプレイ、それからクラウドストレージである以上、インターネットに接続できる環境であるかどうかになりますが、これも通常は満たすものと考えられます。
「真実性の確保」については、事務処理規定を作成することで対応可能です。
問題は、「検索機能の確保」ということになります。
ここに想定されている”システム”は、”「年月日」「金額」「取引先」で検索できるかどうか”が問われています。
上記の無料のクラウドストレージでは、通常、ただアップロードするだけでは、「年月日」「金額」「取引先」で検索できるということにはならないと考えられます。
ただし、GoogleDrive(Google Workspace Business Standard以上)では、ラベル機能を活用することにより満たすことが可能であったりと、各ストレージでは満たす場合もあるかもしれません。
そうでなければ、結果、ここでいう”システム”には該当せず、自社サーバーで保存することと同列に考えることになるため、「年月日」「金額」「取引先」を満たすべくファイルのタイトルを工夫するか、エクセル等での索引簿で管理するか、といった対応が必要になります。
なお、小規模事業者(2023年以降、2期前の売上高が5,000万円以下)に関しては、上記の検索要件は関係しません。
スキャナ保存はどうか
「スキャナ保存」への対応において、上記のクラウドストレージで対応することができるかどうか。
要件のなかに、「タイムスタンプの付与」または「訂正削除システム」とがあります。
タイムスタンプを付与した後のデータを管理するためであれば、上記のクラウドストレージでも対応できるかもしれませんが、そもそもタイムスタンプは馴染みがなく、対応しようと思うと別途コストがかかることになります。
訂正削除システムの要件を満たすかどうかですが、上記のクラウドストレージに訂正削除の記録機能があるかどうか。その機能が、電子帳簿保存法の求める要件を細部まで満たしているといえるかどうか、ということになりそうです。