起業時における資金調達やオフィス選びは、会社の存続を大きく左右する重要な決断です。会社を倒産リスクから守る「安全性」の観点から、2つの重要な選択肢を見てみます。
松岡靖浩著「会社をつぶさない社長の選択」(かんき出版)を参考にして。
資金調達の選択:「自己資金」VS「融資」
起業にあたり「できれば借金はせず、自己資金だけで経営したい」と考える方は多いですが、経営の観点からはリスクが伴います。
| 比較項目 | 自己資金のみで始める場合 | 融資を活用して始める場合 |
|---|---|---|
| 手元の現金 (安全性) | 設備投資や経費ですぐに枯渇しやすい | 余裕があり、不測の事態に備えられる |
| 事業展開のスピード | 資金の範囲内に限定される | 必要な投資を適切なタイミングで行える |
| 金利負担 | なし | あり (安全性を買うための「保険料」) |
| 倒産リスク | 手元資金が尽きやすく、実はリスクが高い | 手元に現金がある限り、会社はつぶれない |
会社にとって最優先すべきは「安全性」であって、それはつまり、「手持ちの現金預金」を確保することです。
会社が倒産するのは、多額の借金があるから倒産するのではなく、手元の現金が尽きたときなのです。
起業時には、無担保・無保証人で実績ではなく事業計画で審査される「日本政策金融公庫」の創業融資制度の利用を検討します。
銀行は、”雨が降っている時(業績悪化時)”には傘を貸してくれないため、”晴れている日(余裕がある時)”に借りておくことが重要です。
オフィス選びの選択:「自社ビル」VS「賃貸ビル」
事業の拠点となるオフィスや店舗についても、購入するか借りるかで大きく経営状況が変わります。
経営的なリスクを抑えるためには、結論から言えば、「賃貸」がおすすめということになります。
| 比較項目 | 自社ビル(購入) | 賃貸ビル |
|---|---|---|
| 初期費用・固定費 | 多額の購入資金、ローン返済、維持費がかかる | 保証金などはかかるが、購入に比べ大幅に抑えられる |
| 事業規模の変化への対応 | 拡張・縮小が難しく、使い勝手が悪くなりがち | 従業員数や事業規模に合わせて簡単に引っ越せる |
| 好立地への移転チャンス | 固定されているため、フットワークが重い | 家賃相場の下落時など、好条件の場所へすぐ移れる |
| 事業撤退時のダメージ | 売却できない場合、含み損や維持費を抱え続ける | 想定外の事態でも、傷が浅いうちに早期撤退できる |
自社ビルは、それ自体が利益を生み出すわけではありません。
賃貸の最大のメリットは、「変化への対応力」です。
ただし、初期費用を抑えるためにバーチャルオフィス等を利用する場合は、銀行口座の開設審査が厳しくなる傾向があるため、法人設立前に銀行へ相談するなどの注意が必要です。
不確実な時代を生き抜く、柔軟で安全な起業の形
起業初期における選択は、会社に「現金」という体力を残し、「柔軟性」という身軽さを持たせることが成功への鍵となるといえます。
- 「自己資金 VS 融資」
融資で手元資金(現金)を厚くし、安全性を高める。 - 「自社ビル VS 賃貸ビル」
賃貸で環境変化に即座に対応できる身軽さを保つ。
”借金=悪”というイメージを捨て、金利を保険料と捉えること。
状況に合わせて形を変えられる賃貸を選ぶこと。
この2つの選択は、これから起こりうる約10年周期の大きな経済変化の波を乗り越え、会社をつぶさずに長く成長させていくための土台となってきます。
