年末調整電子化の活用可能性

年末調整についても電子化の選択肢ができてきていますが、現状(2023年4月現在)、どこまで現実的に活用可能であるのか。

戸村涼子著「クラウド会計を活用した電子帳簿保存法対応の実務」(日本法令)を参考として。

目次

年末調整の電子化

国税庁は、2020年分年末調整には「年末調整ソフト」を公表、2021年分からは年末調整電子化の事前承認を撤廃するなど、年末調整の電子化を推進しているという流れがあります。

データ保存はどこまで認められるか

年末調整そのものを電子化して行うことで、以下のメリットが考えられます。

  1. データ保存が認められれば、紙保存が不要となる。
  2. 紙でのやり取りではなくシステムを使うため、スムーズに処理を進めることができる。

データ保存について

年末調整にあたっては以下のような紙資料があり、これらがデータ保存できるかどうかは大きな関心事です。

控除申告書
控除証明書
  • 扶養控除等申告書
  • 配偶者控除等申告書・基礎控除申告書・所得金額調整控除申告書
  • 保険料控除申告書
  • 住宅借入金等特別控除申告書
  • 生命保険料控除証明書
  • 地震保険料控除証明書
  • 住宅ローン特別控除証明書
    (住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除証明書)
  • 住宅ローン年末残高等証明書

データ保存にあたっては、以下のような「要件」があります。

控除申告書のデータ保存の「要件」
控除証明書のデータ保存の「要件」
  • メール等・USB・クラウド・社内LANでやり取りすること
    ※メール等・USBの場合、パスワード設定等が必要
  • ID・パスワード等で情報送信する措置を取ること

  • マイナポータル連携
  • e-tax(住宅ローン控除関連)
  • 保険会社からダウンロード

これらの要件を見る限り、以下では、「データ保存」の要件は満たさないということになります。

  • 紙の申告書・紙の控除証明書をスキャン
  • エクセルなどに単に入力したデータ

ここからいえることとして、以下である必要がありそうです。

  • データ保存するためには、相応のシステムを使う必要がある
  • 控除証明書についても、マイナポータル・e-tax・保険会社ページで取得したデータである必要がある

クラウドシステムと年末調整

国税庁より年末調整ソフトが出ていますが、それを使用しなければならないわけではありません。

クラウドシステムでいえば、freee人事労務やMF年末調整などでも、電子化された年末調整は可能となります。

上記のデータ保存についても対応可能です。

ただし、クラウドシステムで完結できない領域(控除証明書の所定のデータ)もあります。

現実的な運用

今のところ現実的な運用として、以下のような運用パターンが取っ掛かりがよいと考えられます(私見)。

  • freee人事労務・MF年末調整を使い、やり取りをスムーズにする(=控除申告書のデータ保存)
  • 控除証明書は紙で回収する(=控除証明書の紙保存)

紙で手元に来る資料を、わざわざ普段使い慣れないマイナポータル・e-tax・保険会社ページでデータ取得する必然性も薄く、従業員にとってあまりメリットがないほか、各従業員間でデータ取得ができる・できないにリテラシーの差が出てしまうと考えられます。

よって、控除申告書についてはクラウドシステムを使って電子化を進め、控除証明書については紙のものを回収・保存することで当面は様子を見て、今後の電子化のメリットを享受できる機会を窺うことが現時点(2023年4月時点)での最適解のような気がしています。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
目次