弱者(中小企業)が強者(大企業)と戦っていくための「戦略」の視点について。
栢野克己(著)竹田陽一(監修)「小さな会社の稼ぐ技術」(日経BP社)を参考として。
強者(大企業)と同じ「戦略」にしても勝てない
ランチェスターの法則で考えると、普通に戦うと”戦闘力”が高い方が勝つのが通常です。
”戦闘力”とは「武器の性能×兵士の数」ですが、ビジネスに置き換えれば、「ヒト・モノ・カネ」と言い換えることができます。
当然、 「ヒト・モノ・カネ」 が豊富でない弱者(中小企業)は、強者(大企業)との間では、”戦闘力”に差があります。
その戦闘力差のなかで、弱者が、強者と同じ戦略を取っても、強者に対抗することができません。
そのため、弱者が強者に対抗するためには、強者とは異なる「戦略」を考える必要があります。
ランチェスターの法則のおさらい
ランチェスターの法則を、もともとの軍事の法則として、”勝つために弱者が取るべき戦略”のポイントをまとめると、以下のようなものです。
- 局地戦:見晴らしのよい広い地域ではなく、複雑狭隘な限られた地域で戦う
- 一騎打ち:ターゲットを決める
- 接近戦:できるだけ接近して戦う
- 一点集中:戦闘力を集約し、集中させる
- 陽動作戦:動きを見せず、裏をかく
弱者(中小企業)の戦略の”視点”
商品
幅広い商品を扱うとなると、「ヒト・モノ・カネ」 に勝る強者に勝つことが難しくなるため、できるだけ商品は絞った方がよいといえます。
その商品に関しては強者に負けないほど夢中になれて質を高められる、と思えるものが適していると思われます。
地域
幅広い地域をカバーするとなると、コストもかかり、「ヒト・モノ・カネ」 に勝る強者に勝つことが難しくなるため、地域を絞った方がよいといえます。
地域を絞り、そのなかで成果を出すことで、得がたい口コミ紹介を得ることができ、実績が作られて知名度も上がります。
客層
幅広い客層をカバーするとなると、 「ヒト・モノ・カネ」 に勝る強者に勝つことが難しくなるため、客層を絞った方がよいといえます。
自社の強みが活かせる客層に照準を合わせ、思い切って苦手な客層は捨てるつもりでいるくらいがちょうどよいと思われます。
営業
「ヒト・モノ・カネ」 に勝る強者が取らない営業方法に着目した方がよいといえます。
強者にとっては手間のかかる営業方法でも、地域を絞り込む弱者にとっては、さほど手間ではないものもありえます。
また、”お客様との顔が見える関係”というのも、地域を絞り込む弱者ならではの強みです。
強者にとっては面倒でアナログで泥臭く、効率性の観点から切り捨てられるような分野こそ、弱者の入っていける余地があります。
顧客対応
「ヒト・モノ・カネ」 に勝る強者でも、効率性の観点から切り捨てられがちな分野といえるかもしれません。
お客様によって、個別の背景も事情も異なります。これらを熟知し、それに応じた対応ができるのは、強者に対する弱者の強みともいえます。
特に、”お客様との顔が見える関係”のなかで、強者よりもお客様の諸状況に応じた対応を取ることで、お客様の安心感や信頼を勝ち得ることができるという強みを持っています。
業種によっては商品単価が低い業種であっても、お客様のリピート率を上げることによって、年間のお客様単価は大きいものとなり、顧客対応のコストは十分に吸収できるものとなり得ます。
仕組みづくり
経営者は、ある時点から「戦術」(繰り返し行う業務)を人に任せ、「戦略」に力を入れる余地を確保する必要性に迫られることになります。
経験の少ない人ができるだけ早く一定レベルになってもらうには「マニュアル」が有効です。
逆にいえば、一定レベルからは、マニュアルではパフォーマンスが期待できなくなります。
このときに、どのような仕組みでもって従業員のモチベーションを上げ、パフォーマンスを上げていけるかということについての創意工夫が求められます。